照れるジラースー
 いつものように昼頃目を覚ました。やけに静かだなあと思って見渡したら、店の中には誰もいない。日曜日なら休みなので不思議は無いが、今日は土曜日だ。
 「客が来たらどーするんだい。」と独り言言いながら台所を覗いたが、やはり、誰もいない。外に出て、建物の周りをぐるっと回ったが、そこにもいない。「???」と思いつつ母屋の方へ向かった。そこで俺は、驚きのシーンに出くわした。
 母屋の玄関からジラースーが出てきた。もちろん、それ位では俺が驚くことはない。そのすぐ後からマナが出てきて、それからウフオバーが出てきて、そして、ジラースーとマナが並んで、振り向いて、ウフオバーに向かって、頭を下げたのだ。二人で、「よろしくお願いします」なんて言っているみたいなのだ。これに驚いた。
 「おー、いよいよ、ついに、ジラースーも決心したのか!」という驚きだ。俺は彼らの反対側から店の表に回った。ばったり出くわした風にして、ジラースーとマナの顔を見てやろうと思ったのだ。特に、もうオジーと呼ぶに十分の年齢となっているジラースーがどんな顔しているのか、俺は興味津々であった。ところが奴ときたら、声を掛ける俺を無視して、帽子で顔を隠すようにして俺の前を通り過ぎて行きやがった。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.3.21  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
inserted by FC2 system