開き直ったオジー
 金曜日の午後、ユクレー屋のカウンターで俺は一人だった。いつもならカウンターの向こうに立っているマナは、さっきからずっと台所にいる。
 じつは、俺はカウンターで一人だが、台所にいるマナは一人じゃ無い。ジラースーと一緒だ。一緒に料理している。ジラースーが持ってきた魚を捌いているのだ。オジーとオバサンが仲良く作業をしている。新婚夫婦のように、・・・ということで、
 「よー、お熱いね、新婚ごっこかい?」とちょっとからかう。
 「ん?・・・ごっこじゃ無ぇ。新婚だ。」と、パイプの煙をくゆらしながら、平然とした顔でジラースーは答える。結婚したら女は強くなるって言うが、男も強くなるのか、開き直ったオジーである。もう、からかっても無駄みたいである。
 その熱々ぶりを眺めていることに疲れて、俺は庭に出た。空は晴れていて、爽やかな気候だ。甘い風が吹いてきた。シークヮーシャーの花が咲いていた。その匂いだ。「おー、お前も甘いようだが、しかし、中の二人の甘さには負けてるぜ。」と独り言を言う。
 夕暮れまでにはまだ2時間くらいはある。「浜に出て、海でも眺めているか。」と海岸に出た。潮風も今日は何だかすごく甘く感じた。睡魔が襲った。
   −−−ある日の新婚夫婦の情景−−−
語り:ケダマン 2008.4.25  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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