妬まない女
 このところ金曜日の午後は、ジラースーがユクレー屋にやってきて、マナと二人で料理をしている。オジーとオバサンの熱々ぶりを見ているのはちょっと疲れる。で、俺は、ジラースーがやって来る昼下がりから夕方までの2時間ばかりはたいてい散歩だ。
 で、今日も「ぽっかぽかだね」のオジーとオバサンなんだが、今日の俺はしかし、散歩に出ていない。仲良く料理をしている二人を横目にして、カウンターに座っている。カウンターでちびりちびり酒を飲んでいる。そして、今日の俺は一人じゃない。
 今日、ジラースーと一緒にユイ姉がやってきた。マナの結婚を祝うためにである。一ヶ月遅れだが、手の離せない仕事があったということだ。
 「おめぇもよ、随分長いこと独りのままだよな。羨ましくないか、マナが?」
 「そうねぇ、マナは3回目だよね。そんだけ恋ができるってのは羨ましいさあ。」
 「ふーん、じゃあ、ちょっと小姑気分で、苛めたくなるんじゃないか?」
 「そんなことは無いさあ。妬みはしないよ。人には人それぞれの幸せの形があるのさ。マナはそれで幸せ、私もこれで幸せなのさ。」
 悲しみを背負って生きてきたユイ姉だ。さすが、人間ができている。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
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