ダマース法
 マナが散歩から帰って来た。適度な運動は妊婦の体にも必要とのことだ。晩秋の昼下がり、といっても南の島の晩秋なので、陽射し穏やか、風は爽やかだ。散歩も気持ち良かろう。マナの顔もゆったりとしている。訊くと、「そうだね。妊婦の私には最適さあ。」とのこと。
 「しかし、出産まであと二ヶ月も無ぇな。予行演習はやってるのか?」
 「何よ、予行演習って、産む練習なんてできないよ。」
 「ダマース法ってのがあるだろう?亭主と一緒に練習するやつ。」
 「ダマース法じゃなくて、それを言うならラマーズ法だよ。」
 「ん?そうだったか?俺はてっきり、痛いのを痛くないよって騙すからダマース法だと思ってたぜ。んじゃあ、ラマーズ法ってのは何の意味だ?」
 「ラマーズは人の名前だよ。お医者さんだよ。その人が考えた分娩法なのさ。」
 「スースーハーハーしながら、痛くないよ痛くないよってやるんだろ?結局、騙し騙し産ませてるんだ。お前もよ、騙された方がいいんじゃ無ぇか?」
 「私は安産型なのさ。騙されなくてもスッポンって出てくるのさ。」
   −−−ある日のマナとの会話−−−
語り:ケダマン 2008.11.14  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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