母の幸せ
 心地良い季節、この頃は毎日、庭の木にハンモックを吊るし、そこで昼寝している。今日もそうして、幸せに浸っていたら、ゑんちゅ小僧に起こされた。
 「おー、もうそんな時間か?」
 「いや、いつもよりは少し早いね。」と言う通り、まだ夕暮れには時間がありそうな明るさだ。まあ、しかし、目覚めてしまったものはしょうがない。二人で中へ入る。
 客がいた。昼間だと村人がユクレー屋を訪ねることは普通にある。お茶を飲みに、あるいは買い物にやってくる。その時は30代から50代の女性ばかり3人、3人とも最近島にやってきた人ばかりだが、ゑんちゅとは既に顔見知りで、俺やガジ丸の存在も知っていて、マジムン(魔物)を目の前にしても驚くことは無い。もうすぐ子供の生まれるマナを中心にして、お茶を飲みながら4人で賑やかにユンタクしていた。
 3人とも、過去に深い悲しみを経験しているが、マナの幸せオーラに影響されてか、今は皆、にこやかな顔をしている。
 「子供を亡くしたけれど、この島に来て、住んで、分ったことがある。子供がいたということだけでも幸せなんだね。」とのことだ。3人が帰る日も近そうだ。
   −−−ある日のユクレー屋の情景−−−
語り:ケダマン 2008.11.21  次のケダマン 前のケダマン 最初のケダマン ユクレー島
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