ヒオウギ類
 私は非常に出来の悪い学生であったが、大学は日本文学科を出ている。出来は悪くとも5年間も通ったので、文学に関する知識はほんの少しだが、ある。ヒオウギを今回調べて、「その黒い実のことを『ぬばたま』という」とあるのを見て、「お、枕詞ではないか」とすぐに気付いた。枕詞には一応の意味があるのだということは、今回知った。
 ぬばたまの(射干玉の)は、「黒」「夜」「夕」「月」「暗き」「今宵」「夢」「寝」などにかかるらしい。黒い実だから、黒に関する物事にかかっているようだ。枕詞は他に、「あかねさす」とか「あおによし」とか「ひさかたの」などなどがある。それぞれ茜、青丹、久方といった漢字が指し示すような意味がある。なかなか面白いのだが、ここでは関係ないので詳しくは述べない。興味のある方は自分で調べてください。

 ヒオウギ(檜扇):花壇
 アヤメ科の多年草 方言名:カラソウジ
 原産分布の記載が文献には無かったが、広辞苑にも載っているところをみると、日本各地に自生しているのだろう。沖縄に自生しているかは不明だが、十分生育している。
 檜扇とは笏(しゃく、聖徳太子が手に持っているもの)の代わりとなる礼装の際の具足(携帯品)で、檜の板を重ねて作られ、広げると扇状となるもの。ヒオウギの、花を多数つけた花茎の形が広げた檜扇に似ているので、この名となったらしい。
 高さ1メートルほどまで花茎を伸ばし、花茎はいくつも枝分かれ(これが扇の形)して、その先に多数の花をつける。花は黄赤色で花びらの中に暗赤色の斑点がある。本土では夏の花と広辞苑にあったが、沖縄では6、7月頃から咲き、10月まで続く。花後の黒色の種子のことを「ぬばたま」または「うばたま」という。と、これも広辞苑にあった。
 ※名前の由来、『野の草花図鑑』には「葉が重なり合うように並ぶ様子が檜扇」とあった。檜扇の写真を見ると、どうも『野の草花図鑑』の言うことが正しいようである。

 花

 実

 ついでに、ヒオウギに近いその他のもの

 ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙):花壇 →記事
 アヤメ科の多年草 南アフリカ原産 方言名:無し
 『沖縄植物野外活用図鑑』にはモントプレシアという名で載っていたが、どうやら一般的では無いらしく、その名ではネット上で見つからなかった。一般名は属名でもあるクロコスミアというらしい。別名としてヒメヒオウギズイセンとあった。
 6月から夏の間、高さ80センチほどの花茎を伸ばし、穂状に花をつける。職場の庭の一角に雑草のように広がっている。花色は濃赤色、橙、または朱色などがあるとのこと。

 ヒオウギズイセン(檜扇水仙)
 アヤメ科の多年草 南アフリカ原産 方言名:無し
 これは私が参考にしているどの文献にも記載が無かった。広辞苑によると、南アフリカ原産で、観賞用に明治時代に輸入され、夏に黄色の花を多数つけ、などとあった。
 記:島乃ガジ丸 2005.7.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
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