ツルソバ
 私は蕎麦が好きで、家でもよく食べる。蕎麦は概ねスーパーに売っている乾麺を使っている。更科蕎麦とか十割蕎麦などを、たいていは冷たいおろし蕎麦やとろろ蕎麦で食っている。朝飯や昼飯になるし、夜食うときは酒の肴にもなったりする。
 沖縄にもずいぶん前から蕎麦屋はある。私の記憶では復帰後の30年前から(もっと前からあったかもしれないが、その頃は蕎麦に興味は無かった)はあったと覚えている。美味しいと評判の蕎麦屋もあるようだ。が、私は沖縄の蕎麦屋で蕎麦を食った経験はあまり無い。おそらくここ10年では1度も無いのではないだろうか。
 私は概ね年に2回は旅をしている。旅先ではほぼ必ず蕎麦屋で蕎麦を食っている。その土地の蕎麦を、その土地の蕎麦屋で。先日の「新潟から山越え東進の旅」では、新潟に着いたその日に、さっそく蕎麦を、しかもこの時期にはいつも楽しみにしている新蕎麦を食った。辛み大根おろし蕎麦なるもの。たいへん美味しく、満足した。
 いつも参考にしている文献の内、『沖縄植物野外活用図鑑』には植物として蕎麦も記載されている。が、蕎麦が沖縄で栽培されている話を、私は聞いたことが無い。おそらく沖縄の環境が蕎麦の生育に適さないのであろう。育てて育たないことは無いが、実らすまでには手間隙がかかるということなのであろう。従姉も一度、庭の畑で蕎麦を育ててことがある。上手くいかなかったようだ。収穫した話は聞いていない。

 ツルソバという植物は、沖縄ではごくありふれた植物で、畑でも庭でも野原でも、いつのまにか何かに絡まって顔を見せる。蕎麦と同じタデ科だが、こちらは農産物とはならない。実は食えるらしいが、栽培していることは無いようなので、まあ、そう旨いものではないのだろう。モノに絡まって伸びていくが、さほど繁殖力が強くはないようで、他の蔓性の雑草に比べると、大人しく、慎ましい感じがする。私の畑にもちょくちょく顔を出すが、あまり煩いとは思わない。でも、雑草。引っこ抜かれる。

 ツルソバ(蔓蕎麦):野草
 タデ科の蔓性多年生草本 関東以南、南西諸島、他に分布 方言名:シーボーザー
 葉や花の付き方などがソバ(蕎麦)に似ていて蔓性なのでツルソバという名前。蕎麦も同じタデ科の植物であるが、環境が合わないのか沖縄では栽培はされていない。沖縄ソバという食い物は蕎麦粉を用いたものでは無く、小麦粉を材料としている。
 畑や野原など、どこにでも普通に見られる馴染みのある植物。小さな白い花を蔓先に数個つけるが、花後の黒紫色の実の方が目立つ。沖縄ではほとんど年中咲いている。
 果実は食用となるようだが、小さいので食指は動かない。酸味があるらしい。

 ちなみに、
 ソバ(蕎麦):食用・農産物
 タデ科の一年生草本 東アジア北部辺りが原産地といわれている
 日本の伝統食、蕎麦の原料。沖縄を除く全国各地で栽培されている重要な作物。日本だけでなく中国や朝鮮、ロシアなどでも広く栽培され、食されている。
 品種がいろいろあって、夏ソバ・秋ソバなどがある。
 記:島乃ガジ丸 2005.10.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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