テリハノブドウ
 ノイチゴは耳に懐かしい。童話や絵本にノイチゴが出てくる。甘酸っぱい思い出が蘇ってくる。ノイチゴを実際に食した記憶は二十歳頃、青春の甘酸っぱい記憶である。
 それに比べ、ノブドウにはその思い出となるものが何も無い。ノブドウという名前だけを聞くと、野原を駆け巡って、子供たちがノブドウを見つけ、「わーい、やったー。」などと叫びながら、みんなで仲良く食べるというお話ができそうなんだが・・・。
 ノイチゴがお話によく出てきて、ノブドウが出てこないということには訳があった。今回、調べて知ったことだが、ノブドウは食えないのだ。だからお話にならない。

 果実のブドウとノブドウは同じブドウ科だが、属が違う。ノブドウとは別に、日本にはヤマブドウやエビヅルといったブドウ科の植物が自生している。それらは果実のブドウと同属で、どちらも食べられるらしい。ただ、どちらも沖縄には無い。
 ヤマブドウとノブドウ、漢字で書くと山葡萄と野葡萄となるが、字面では野葡萄の方がより食べられそうな雰囲気を持っていると私は思う。もしも、ノブドウが食用になるのであったならば、お話にも出てきて、もっと有名になって、大事にもされたであろう。しかしながら現実は、野原や民家の庭に勝手に生えてきて煩がられる雑草となっている。
 ちなみに、それぞれの学名。
 ノブドウAmpelopsis glandulosa var. heterophylla:
 テリハノブドウAmpelopsis brevipedunculata var. hancei Rehd.
 ヤマブドウVitis coignetiae
 エビヅルVitis ficifolia Bunge
 果実のブドウの属名はVitis

 テリハノブドウ(照葉野葡萄):野草
 ブドウ科の蔓性落葉低木 九州南部以南、琉球列島、他に分布 方言名:ガニブ
 ノブドウが広辞苑にあり、野葡萄と書いて「ブドウ科の落葉蔓性低木・・・夏、淡黄緑色5弁の小花をつけ・・・球形の液果を結び・・・食べられない。」のこと。本種はその変種で、葉にツヤのあることからテリハ(照葉)となっている。
 蔓性の植物で、蔓の長さは3〜6mほどになる。野原や道端で他の木や草に絡み付いているのをよく見る。見えている部分だけからは草本のようだが、『沖縄四季の花木』にとれば、「根元の茎は木の枝のように堅く」なっているらしい。ということで木本。
 葉の脇から花序(花をつけた茎)を出し、淡緑色の小さな花を多数つける。開花期についての資料は無いが、私の写真は6月、文献の写真は8月、ノブドウの開花期が夏ということから、本種の開花期も夏ということにしておく。
 果実は7ミリほどの球形で淡紫色、または青く熟す。食べられない。

 花
 記:島乃ガジ丸 2008.1.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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