タイワンクズ
 ほぼ毎週末、2時間、多い時は4、5時間の散歩をしているが、散歩する場所は特にどこと決まっているわけでは無い。ただ、いくつかの場所は年に数回、周期は決まってないが、訪れている。中でも、首里の末吉公園は最も訪れる機会の多い場所。
 そこでは、いろいろな植物を発見させてもらっている。タイワンクズもその一つ。去年の秋に見つけたが、あたり一面他の草木を覆うようにして広がり、きれいな青紫の花を多く咲かせていた。今まで気付かなかったのが不思議なくらい目立つ植物であった。
 タイワンクズはクズ(葛)と同属のツル植物。クズはご存知、葛湯、葛餅のクズ。秋の七草のクズ。タイワンクズも、同じく根からデンプンが採れる。
 ご存知のクズと書いたが、実は、クズは沖縄には自生しない。なので、ウチナーンチュの多くは、その名前は知っていても、実物は見たことがないと思う。私も実物を見たことは無い。が、葛粉は見たことがある。数年前に奈良を旅した時、本物(でないものも今は多いらしい)の吉野葛(小袋)を購入した。葛湯用だったので、葛湯にして頂いた。
 タイワンクズの根からもデンプンが採れるのであれば、それもまた葛粉と同じように利用できるに違いない。将来、食糧難になった時のことを考え、野原の食い物を勉強している私にとって、これは良い情報である。野原の食い物が一つ増える。試してみよう。

 タイワンクズ(台湾葛);ツル性の野草
 マメ科の常緑蔓性木本 南西諸島、台湾、インドシナ、他に分布 方言名:マーミヌク
 クズ(葛)はご存知、葛餅のクズ。台湾は南方のという意味。その通り、南西諸島以南に自生する。本種はクズと同科同属で見た目も似ているとのこと。クズとは葉の形が少し違い、花序が葉の上に出ていることで区別できるとのこと。
 方言名のマーミヌクは豆の粉という意味だと思われるが、本種もクズと同じく根から葛粉ができる。マーミヌクがそれを指しているのかどうか、詳細は不明。
 葛根湯(かっこんとう)はよく耳にする漢方薬だが、「葛根を主材とし、・・・を煎じつめた漢方薬。悪寒・・・嘔吐などに用いる。」(広辞苑)のこと。葛根はクズの根という意味だが、本種の根も葛根という名で、同様に使われる。
 ツル植物としては大型で、蔓の長さは10mほどになる。野原や道端、大きな公園などに多く、他の樹木にツルが巻きついて伸びる。葉は三出複葉。
 クズは沖縄に無いが、本種は沖縄に自生する。花は青紫色で、葉腋から花茎を出し、その先に密につける。開花期は9〜11月。陽光地を好む。ちなみに学名、
 タイワンクズ Pueraria montana (Lour.) Merr.
 クズ Pueraria lobata (Willd.) Ohwi

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.2.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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