サダソウ
 2011年7月だからもう8年ほど前、読谷村にある座喜味城跡へ出かけた。東京から友人Iが遊びに来ていて、彼の希望による座喜味城跡であった。着いてすぐに彼は資料室へ、資料室で1時間ほどは費やすというので、その間、私は城跡の散策をする。
 座喜味城の奥には、遊歩道はあるけど人はあまり入った形跡のないジャングルのような面白い場所があった。植物や動物の写真がいくつも撮れた。
 後日、撮った写真の植物や動物がそれぞれ何者であるか調査する。調査と言っても図書館から借りた図鑑と照らし合わせて「これはこれだ」と判定するだけのこと。今回紹介するサダソウは、その時「これはこれだ」と判ったものの1つ。 
 判ってから8年も経って、「何で今頃?」なのだが、すっかり忘れていたというだけのこと。実は今年2019年5月、埼玉から遊びに来ていた友人Kと中城城跡を訪ねる機会があった。そこで、すっかり記憶から遠のいていたサダソウに出会う。記憶力の弱い私だがサダソウは特徴のある見た目をしているのでそんな私でも思い出せたのであった。 
 2011年7月座喜味城跡で撮った写真
 
 サダソウ、参考文献によるとそう珍しいものでも無いようなのだが、久しぶりに見る。というか久しぶりに存在に気付いたという方が事実に近いと思う。出会った場所が8年前も今年も城跡というのが面白い。何か、因縁があるかもと考えていたら、1つ、

 沖縄の古い、有名な楽曲に『上り口説(ヌブイクドゥチ)』という古典がある。琉球から薩摩へ首里王府の役人がご挨拶に行く、その道中を語っている歌。首里から那覇の港へ行き、船に乗って薩摩へ至るその道中を語っている。その後半の何番かに、
 ・・・佐多の岬に・・・
と出てくる。サダソウという名前は佐田岬に由来しているとのこと。首里の偉い侍が薩摩に行くたび佐田岬が目に入る。サダソウを見ると佐田岬を思い出す。で、サダソウは偉い侍に好かれ、よって、侍がいる城に植えられたのかもしれない・・・想像です。 
 サダソウ(佐多草):野草
 コショウ科の多年草 四国、九州南部、南西諸島、台湾に分布 方言名:不詳
 名前の由来は『琉球弧野山の花』に「和名は大隅半島の佐田岬に由来する」とあった。佐田岬に多く見られ目立ったのか、佐田岬で学術的発見がなされたのかは不明。
 海岸近くの石灰岩地域の岩の上に多く、山地の岩上でも見られる。私の写真はいずれも山地の方で、2011年は座喜味城、2019年は中城城といずれも城跡。
 茎は直立して高さ15〜40センチほどになる。葉は多肉質。形状は倒卵形で対生するが、時に3〜5の輪生となる。葉の表も裏も軟毛がある。
 花穂は細長い円柱形で長さ3〜12センチ、茎の先端または葉脇から出る。花はごく小さく花穂に多く着き、4月頃に咲く。
 観葉植物として人気のあるペペロミアの仲間。本種は葉の表も裏も軟毛があるが、オキナワスナゴショウ(別名ケナシサダソウ)という軟毛のない近縁種もあり、九州南部〜南西諸島に分布する。ちなみに学名は、
 サダソウ Peperomia japonica Makino
 オキナワスナゴショウ Peperomia okinawensis 
 2005年10月の写真、場所は不明。毛が無いのでケナシサダソウと思われる。

 ちなみに、ペペロミア 
 コショウ科ペペロミア属。小型の多汁質の多年草で一般には多肉質。
 世界中の熱帯、亜熱帯に数多くの種が自生しており、葉が美しい種が多くあり観葉植物として栽培される。ペペロミア属は和名ではサダソウ属となる。品種が多く、写真のものが何という種であるか素人には判断が難しい。
 記:島乃ガジ丸 2019.6.9  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
 『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行
 『琉球薬草誌』下地清吉著、琉球書房発行
 『沖縄やんばるフィールド図鑑』 湊和雄著 実業之日本社発行
 『グリーン・ライブラリー』タイムライフブックス発行
 『ネイチャーガイド 琉球の樹木』大川智史・林将之著、株式会社文一総合出版発行
 『つる植物』沖縄都市環境研究会著 (有)沖縄出版発行
 『熱帯アジアの花』ウィリアム・ウォーレン著、チャールズ・イー・タトル出版発行
 『講談社園芸大百科事典』野間省一編集、講談社発行
 『沖縄の薬草百科』多和田真淳・大田文子著、那覇出版社発行
 『沖縄食材図鑑』田崎聡著、有限会社楽園計画発行
 『自分で採れる薬になる植物図鑑』増田和夫監修、柏書房株式会社発行
 『家庭で使える薬用植物大図鑑』田中孝治著、社団法人家の光協会発行
 
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