イワダイゲキ
 金曜日の職場(働いてはいない。HPをアップするために使わせて貰っているだけ)の事務員M子は海が好きだと言う。海が好きと言ってもマリンスポーツが好きというわけでも、ビキニを着てモンローウォークするのが好きというわけでは無い。彼女が好きなのは海に行って釣りをしたり、潮干狩りをしたりすること。
 漁(いさ)りとは「魚介を捕ること」(広辞苑)のことだが、沖縄では、あるいは私の周辺では特に「夜間に魚介を捕ること」を言っている。数ヶ月前、
 「漁りがしたいんだけど、教えてくれる人知らない?」と訊かれ、釣りも潮干狩りも漁りも得意としている私の知人を紹介した。そして先日、
 「漁りに行くことになったんだけど、一人では何だからあんた一緒に行かない?」と誘われた。しかし私は、漁りより山歩きが好きなので、きっぱり断った。

 大雑把にいえば、私は海より山が好きである。ではあるが、歩くことはもっと好きなので、山歩きだけでは無く海端を歩くのも好きである。海端には海端の植物や動物がいる。それらに出会えるのが好きである。野原や畑ではまったく見かけることの無い植物が多々ある。「ふむ、見かけぬ奴、お主何者?」という楽しみがある。

 イワダイゲキも野原や畑ではまったく見かけることの無い植物の一つ。潮の匂いが好きなのか海風が好きなのか知らないが、彼は海の傍にしかいない。何か得てやろうという魂胆のあるM子に比べればイワダイゲキ、まったく純粋に海が好きなのである。

 イワダイゲキ(岩大戟):野草
 トウダイグサ科の多年草 関東南部〜南西諸島、台湾などに分布 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く不明。イワ(岩)は「海岸岩場に生育することから」と文献にあったが、ダイゲキが不明。ゲキ(戟)は「ほこ」のことで、広辞苑に「中国古代の兵器の一種。戈と矛とを組み合わせた形となる」とあった。戟がどのような形をしているか分からないが、全体の形、あるいは花の形がそれに似ているのかもしれない。
 「海岸のサンゴ礁石灰岩上に多く自生する」とあり、私も粟国島のサンゴ礁石灰岩上、久高島の同じくサンゴ礁石灰岩上で多く見た。
 根元から茎が数本直立して、高さ30〜80センチになる。鮮黄色の花弁に見えるのは総包葉でポインセチアの赤いのと同じ。実際の花は中心のごく一部で濃い黄色。開花期は4月から5月と文献にあるが、粟国島ではその通り4月、久高島では1月だった。「実は扁平の球形で表面にぶつぶつがある」とのことだが、私は未確認。
 記:島乃ガジ丸 2013.2.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
inserted by FC2 system