イソフサギ
 カラオケスナックで、いかにも金持ちといった風の、ブランド服に身を包み、腕に金時計を光らせた年配の男性が次から次とカラオケを歌い、長いことカラオケマイクを独り占めしていた。それに憤慨している中年男二人の会話。
 「あのオヤジ、金持ちのくせに礼儀を知らん奴だ!」
 「衣食足りても礼儀知らず、ってわけだ。」
 「そうだよ、あんなのを衣食詐欺って言うんだぜ。」
 「衣食詐欺か、ふんふん、珍しい詐欺だから異色詐欺でもあるな。」

 以上は、イソフサギの方言名がイショクサギというのを知って、思い付いたお話。植物のイショクサギ、その名の由来は不明だが、きっと、衣食でも異色でも無いはず。

 イソフサギ(磯塞ぎ):野草
 ヒユ科の多年草 九州南部〜南西諸島、台湾などに分布 方言名:イショクサギ
 名前の由来は「イソフサギの和名は磯塞ぎの意味で、いその割れ目に密生するからである」(沖縄四季の花木)とあった。『沖縄植物野外活用図鑑』にも「茎はよく分枝し岩にへばりつくように生えて、磯をふさいでいるように見える」と説明があった。
 他の文献にも「海水のかかる岩の割れ目などに生える」とあるので、それは確かなのであろうが、私が見たのは磯ではあるが、岩場の中の土の溜まったその土の上。
 方言名のイショクサギの由来は不明。イソフサギを舌足らずの子供が発音するとこうなるのだろうか。衣食詐欺とか異色詐欺とか思い付いて、想像があらぬ方向に飛ぶ。
 「岩にへばりつくように生えて」高さは2〜5センチ程に留まる。「茎はよく分枝し」長さは30センチほどで、「磯をふさいでいる」ように見える。
 葉はへら状で、多肉質。花は淡紅色で小さく目立たない。開花期は秋頃。
 記:島乃ガジ丸 2013.3.4  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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