ヒメガマ
 沖縄市の泡瀬海岸は、工業地としての埋立てが進んでいる所だが、その湿地帯は環境保護団体にとって重要な場所らしく、環境破壊がどーのこーのと問題になっている場所でもある。私は勉強不足で、その湿地帯がいかほど重要であるかを知らないが、専門家が大切だと言っているのだから、できるでけ大切にしてね、とは願う。
 その泡瀬に、去年の秋、4回訪れた。環境問題を勉強しようと思ったわけでは無い。仕事でしょうがなく行っただけである。海岸近くにちょっとした広さの公園があり、4日間ともそこで昼食をとった。弁当を食べるベンチの前にはちょっとした広さの池があり、そこには夥しい数のトンボが飛んでいた。お陰で、多くのトンボの写真が撮れた。

 トンボが群れ飛ぶその下、池面から生えて、池の多くの面を覆っている雑草があった。イネ科であることはその形から想像できたが、最初は気にも留めなかった。ところが、よく見ると、細い葉巻のような形をした穂が付いている。穂の中には綿がまとわり付いているのもある。「おー、もしかして、これがあの名高きガマではないか。あの因幡の白兎が毟り取られた毛の代わりに、大黒様に助言されて身に付けたというガマではないか。」と思って、写真を撮り、調べる。文献にガマは無かったが、ヒメガマというのがあった。

 ヒメガマ(姫蒲):水辺の野草・薬草・工芸材
 ガマ科の多年草 北海道から南西諸島、温帯〜熱帯に分布 方言名:カマ、ガマヌフー
 ガマという名前については、その由来は不明であったが、ふとん(蒲団)の由来が判明した。蒲の穂を「蒲団の芯に入れ」(広辞苑)とあり、団は「集まってひとかたまりになった物」(漢字源)ということなので、蒲の穂を集めてひとかたまりにしたものが蒲の集団で、フトン(蒲団)ということのようだ。本種はそのガマと同属で、ガマより葉が細いことからヒメがついて、ヒメガマという名前。
 高さは1〜3mになる。これはガマと大差無い。穂はどちらも夏に出るが、ガマの方が早く、ヒメガマは少し遅れる。ガマの穂は「油を注いでろうそくに代用」(広辞苑)になるとのこと。ガマの穂の長さは20センチほどあるとのことだが、ヒメガマは、私が見たものは10センチ程度しかなかった。でも、おそらく同様にして、短くはあるが、蝋燭の代用になるであろう。今度、試してみようと思う。
 「海岸近くから山手の湿地帯までいたるところ」に生息するらしいが、私の住む近所ではあまり見られない。見たのは沖縄市の池のある公園。池の中から生えていた。中から綿が飛び出て穂に巻きついている写真をよく見る。そのような写真を私も撮った。
 ちなみに、学名はそれぞれ
 ガマ Typha latifolia
 ヒメガマ Typha domingensis

 穂1

 穂2

 ついでに、
 ガマ(蒲):水辺の野草・薬草・工芸材
 ガマ科の多年草 北海道から九州、温帯〜熱帯に分布
 参考にしているどの文献にも記載が無い。沖縄には無いのかもしれない。
 ヒメガマと同じく水辺の植物。花粉は薬になり、葉は工芸材に使われるとのこと。ヒメガマもまた、ある文献の説明に薬草・工芸材とあったが、ヒメガマの葉で作った工芸品とはどのようなものであろうか、私は見たことも聞いたことも無い。
 記:島乃ガジ丸 2007.1.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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