ヘクソカズラ
 自分で言うのもなんだが、私は気のいいオジサンである。にもかかわらず、そんな私のどこが気に食わないのか、近所の野良猫どもは何年もの間、私に嫌がらせをしていた。畑に糞をし、車の前に糞をし、あげくにはベランダにも糞をした。ところが、不思議なことにここしばらく、猫どもは私の畑に糞をしていない。野良猫がいなくなったわけでは無い。少なくとも3匹は近所をウロチョロしているし、最近は夜、オギャーオギャーと恋人を求めて煩く鳴く声をほとんど毎晩聞いている。いるにはいるのだが、私の畑にも、1階のKさんが管理している畑にも、駐車場にもベランダにも猫の糞は見当たらない。
 ヘ(屁)だけでは足らずクソ(糞)までプラスされて名付けられた可哀想なツル植物がある。ヘクソカズラ。散々な名前だが、確かに臭いではある。しかし、臭いと言ったって猫の糞ほど臭くは無い。どういうわけだかしらないが、猫の糞は犬のより、鳥のより、人間のよりもずっと臭い。だから、畑に糞をされるとすごく腹が立つ。まあ、ヘクソカズラの糞も猫の糞では無く、人間の糞に喩えられているということなのだろう。ネコクソカズラという名前で無かった分、いくらか救われていると言えるのだ。

 ヘクソカズラ、ウチナーグチ(沖縄口)ではフィーフィリカンダという。倭語に直訳すると屁をひる(放る)カズラという意味。糞という物体が無い分、ウチナーンチュの方が倭人に比べて、植物に対する優しさが少しは勝っているようである。

 ヘクソカズラ(屁屎葛):野草
 アカネ科の蔓性多年草 北海道から南西諸島まで分布 方言名:フィーフィリカンダ
 和名も臭い名だが、方言名もフィ(屁)フィリ(放る)という意味。葉を揉むと臭いということからきている。和名の別名にはヤイトバナ、サオトメバナなどがある。
 淡い紅紫色の小さな花を多くつける。一つ一つの花はかわいく、全体として見てもきれい。花を見ればサオトメで、匂いを嗅ぐとヘクソとなるわけ。本土での開花は8月から9月らしいが、沖縄では5月頃から咲き、10月まで見ることができる。
 記:島乃ガジ丸 2005.7.10  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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