ギンネム
 沖縄で、きれいさっぱり落葉する樹木といってすぐに思い浮かぶのはコバテイシ、サルスベリ、デイゴ、ヒカンザクラ、キワタノキなどがあるが、荒地や原野、管理のされていない道端の遊休地などに自生しているギンネムもまた、きれいさっぱり落葉する。
 ギンネムの葉は、マメ科の多くがそうであるように羽状複葉であるが、マメ科の中でもホウオウボクと並んで一つ一つの葉がごく小さい。その葉が枯れると水分を失ってさらに小さく、軽くなり、風に吹かれて空を舞う。細かく刻まれた茶色い紙吹雪のように。
     
 冬場、荒地の掃除でギンネムを刈り取ったことがある。種を撒き散らし、どんどん新しい芽を出すので、その荒地には大小さまざまのギンネムが林立していた。大きなものは、高さ4m以上あった。それを根元から切り倒す。幹にノコを入れると枝が揺れる。枝が揺れると枯れた葉が落ちてくる。細かい葉が大量に降りそそぐ。襟元から背中に腹に入る。休憩時間にシャツを脱ぐと、背中や腹にたくさんの枯葉がまとわりついている。
 今年は暖かいので、少し遅れているみたいだが、もうそろそろギンネムの葉が道の上を汚す頃だ。車が傍を走り抜けると、まるで、はしゃぐ子供みたいに枯葉が宙を舞う。
 戦前まではギンネムは沖縄に無かったらしい。戦後、焼け野原になった沖縄に米軍が空からギンネムの種を大量に蒔いたらしい。沖縄の大地に早く、確実に緑を回復するにはギンネムが最上であると、米軍の首脳部は判断したのだろう。そして、それは成功したのだろう。だが、今となっては、邪魔な雑木の代表格となってしまったギンネムなのだ。
 注、羽状複葉:葉柄の延長部の左右両側に2枚以上の小葉が配列する複葉(広辞苑)

 ギンネム(銀合歓):雑木
 マメ科の落葉高木 原産は熱帯アメリカ 方言名:ニブイギ
 漢字を音読みしてギンゴウカンとも言う。ゴウカンと呼ぶものには他にベニゴウカン(紅合歓)がある。いずれも合歓(ネム)とあるのでネムノキとは親戚だが、マメ科の中にネムノキ亜科という分類があって、その中で、ネムノキはネムノキ属、ベニゴウカンはキャリアンドラ(ベニゴウカン)属、そして、ギンネムはギンネム属となっている。
 1本の木にたくさんの花をつけ、1つの花からは200個ばかりの実ができる。その種が飛び散って辺りに広がる。花も樹形も特に見るべきものは無いし、落葉した細かい葉が道を汚すので、できれば、あまりあって欲しくない木なのである。葉は緑肥になると聞いた。また、カルシュームを多く含むので、ギンネム茶という健康茶になるとのこと。
 方言名のニブイギは眠る木という意。夜に葉を閉じる。
 記:島乃ガジ丸 2004.12.21  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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