ベニバナボロギク
 私の通勤靴は労働者用の靴、490円で買える。雨で濡れたりして履けなくなった場合のことを考えて、同じものをもう1足、予備に持っている。
 私のフォーマル靴は、葬式法事用の黒い革靴が1足と、その他のパーティー用の茶色の革靴が1足ある。2足合わせて、年に2、3回しか履く機会が無い。
 私の普段靴は、ここ10年余りはトレッキングシューズを使っていて、旅へも、遊びに行くときも、春夏秋冬これを履いている。これにもまた、万一のことを考えて予備の1足がある。色形は違うが似たようなトレッキングシューズ。履き心地がイマイチなので、買ってから10年以上になるが、履いたの数えるほどしかない。
 靴は、履き潰すまで使っている。底が磨り減って穴があくまで履いている。履き潰したら新しいのを買う。通勤靴はだいたい2年、フォーマル靴は20年(今持っている靴は2足とも20年近くになる)、普段靴は5、6年で履き潰し、新しいのを買っている。
 というわけで、私は常に6足の靴を所有していることになる。大そうな物持ちなのである。私の大好きな詩人、山之口獏に比べれば、である。
 獏の詩に『歯車』というのがある。
 靴にありついて ほっとしたかとおもうと ずぼんがぼろになっているのだ
 ずぼんにありついて ほっとしたかとおもうと 上衣がぼろぼろになっているのだ
と始まる。上衣にありついた頃にはまた、靴がぼろになっているといった内容。獏には今履いている靴しかなく、それもぼろ靴なのであった。

 ぼろ靴の「ぼろ」は漢字で襤褸と書く。それと同じ襤褸がつく野草がある。ぼろ靴のぼろは「使い古して壊れているもの、役に立たなくなったもの」(広辞苑)ということで、それと少し意味は違うが、ベニバナボロギク。まあ、可哀想な名前である。

 ベニバナボロギク(紅花襤褸菊):野草
 キク科の一年生草本 アフリカ原産 方言名:なし
 ボロはボロ布のボロで、「使い古して破れなどした、役に立たない布」(広辞苑)ということだが、何故その名がついたかは不明。別属にボロギク(沖縄には無い)というのがあり、それの何かがボロボロなのであろう。ベニバナのベニは花が紅いから。
 高さ30〜100センチになる。茎も葉も全体に柔らかい感じを受ける。道端や空き地などに生えるよく見かける雑草。特に、畑に多く見られる。茎の先に筒状で、赤橙色の花を多数つける。花はお辞儀するようにして、うつむいて開く。実は白い毛で覆われる。
 本土での開花期は秋のようだが、沖縄ではほぼ年中見られるようである。

 綿毛
 記:島乃ガジ丸 2006.3.21  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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