ヨウサイ
 「夏は花の季節」と思っている倭人は多いかもしれないが、沖縄ではそうでもない。暑さは気温だけでは無い。沖縄より気温の高い地域は倭国に多くあるが、太陽の力が倭国と沖縄では違う。沖縄の真夏の太陽はヒジョーに厳しい。その厳しさは人間だけで無く植物にとっても同じで、厳しい夏よりは春や秋、または冬の季節に咲くものも多い。
 沖縄の夏は野菜の収穫も少なくなる。特に葉野菜が少ない。ゴーヤー、ナーベーラー、オクラなどは夏の野菜で、今が盛りだが、それらは実野菜である。沖縄の夏に耐えて育つ葉野菜は少ない。そんな中、灼熱の太陽の光を浴びて元気に育つ葉野菜がある。ウンチェーである。ウンチェーは和名をヨウサイ、またはエンサイと言い、この時期(夏場)、スーパーでよく見かける葉野菜となっている。

 ウンチェーは、ウンチェーバー(バーは葉の意味)という名前で料理に出される。油炒めが有名で、他におひたしや味噌汁の具材としても利用される。
 以前、ウンチェーのことをよく知らなかった頃は、ウンチェーバーは、イーチョーバー(ウイキョウ)やサクナ(ボタンボウフウ)などと同じような薬草だと私は思っていた。のだが、ウンチェーバーは普通の野菜として扱われているみたいだ。確かに、イーチョーバーやサクナには味や香りに癖があり、薬草のイメージが強いが、ウンチェーバーにはあまり癖が無い。ただし、栄養価の高い健康野菜という点では、遜色はない。

 ヨウサイ(甕菜):葉野菜
 ヒルガオ科の蔓性多年草 熱帯アジア原産 方言名:ウンチェー
 名前の由来は不明だが、広辞苑に甕菜と漢字表記があり、おそらくそれが漢名だと思われる。それを日本語読みしてヨウサイということであろう。
 甕菜の甕が中国語でどう発音されるかは不明だが、菜はチェーに近い発音だ。方言名のウンチェーは、中国人の発音を真似たものだと思われる。
 別名をクウシンサイ(空心菜)と言う。これは、茎が中空となっていることから。『沖縄園芸大百科』には「エンサイ」という名前で載っていた。スーパーなどでは、このエンサイという名前をよく見るような気がする。エンサイの語源は不明。
 サツマイモと同属(Ipomoea属)で、花の見た目はよく似ている。葉の見た目はまったく異なるが、食べた感触はカンダバー(イモの葉)とよく似ている。
 多湿性の植物で、昔は水田で栽培されたようだが、今では畑栽培が主流とのことで、私が見たのも畑で栽培されていた。農夫の友人Tに訊いても、畑とのこと。
 畑だと家庭菜園でも栽培しやすい。ビタミンA、カルシウム、鉄分、食物繊維を豊富に含む栄養価の高い野菜とのこと。沖縄の真夏は植物にとっても厳しいようで、育つ野菜も少ない。そんな中で、ゴーヤー、ヘチマ、オクラなどと並んで重宝する野菜。炒め物、和え物、味噌汁の具などにして食す。茎の方には少し癖がある。
 記:島乃ガジ丸 2008.8.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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