ツルナ
 私が2ヶ月に1回は通っているダンパチヤー(散髪屋)のオヤジさんは、アウトドアの好きな、家族思いの気のいい人で、名前をSさんという。Sさんは、3、4歳の孫もいる歳であるが、その歳にしては背は高い。そして、その背にしては体重の多い、いわゆる、恰幅の良いといわれる体型をしている。顔は四角く、ブスっとしていると怖い顔。その体型に黒スーツを着、その顔にサングラスでもかけようものなら、周りに人が寄り付かない暴のつく職業の人に見える。でも、いつもニコニコして、その笑顔は可愛い。
 先週、髪を切りに行った。髪を切っている間の15分か20分、Sさんは気を使って、いつも何かとおしゃべりしてくれる。私もたまにアウトドアすることをSさんは知っているので、話題はたいていその方面の話となる。その日の主題は薬草となった。

 「新聞は何取っている?」と私に訊く。沖縄の地方紙は沖縄タイムスと琉球新報との2つあって、そのどちらであるかを訊いている。
 「タイムスです。」と答える。
 「タイムスが薬草の小冊子を配っているよね。見た?」とさらに訊く。
 「20ページくらいの、小さな奴ですね。見ましたよ。」
 「あれはいいよね。相当役に立っているよ。あれにさあ、ツルナというのがあってね。海岸の砂浜によく生えていてね。これがまた、なかなか美味しいんだよ。」

 薬草となるものには、道端や空地などに生えているものが多い。その中には野菜として十分美味しく食べられるものも多い。Sさんは釣が得意で、Sさんの奥さんは素潜りで獲物を獲るのが上手で、キャンプのときは海の幸に困ることは無いようであるが、このごろはその小冊子のお陰で、野菜までも野原から現地調達しているようである。
 小冊子は、『沖縄の薬草・野草』沖縄タイムス販売店会県連合会企画・制作。

 ツルナ(蔓菜):薬草・野菜
 ツルナ科の一年生草本 各地の海岸に自生 方言名:チルナ
 長さ50〜100センチまで伸びる茎が、地上を這うようにして広がり、その様が蔓のように見え、また、その葉が食用(菜っ葉)となることからツルナという名前。和名は他にハマヂシャ(浜萵苣、チシャはサラダ菜、及びレタスのこと)といい、英語名も食える名前で、ニュージーランドホウレンソウ(New Zealand spinach)と言う。
 春から秋にかけて黄色い花を葉の脇につけるが、小さくてあまり目立たない。種が水に浮く。波に乗って、あちこちの海岸にたどり着き、そこで芽を出し、繁殖する。
 海岸の砂地に多く見られる野草であるが、葉にはくせが無く、普通の野菜として、お浸し、汁の具、和え物などとして食される。胃炎などに効く薬草としても使われる。 
 野生のツルナ 
 ツルナの花
 写真追加:2019.2.12
 記:島乃ガジ丸 2006.4.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『沖縄の薬草・野草』沖縄タイムス販売店会県連合会企画・制作
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