トウモロコシ
 「宗元寺にいたのは覚えているか?」と父が訊く。宗元寺というのは旧地名で、今の泊三丁目、実家は現在泊二丁目だが、旧名は高橋で、宗元寺の隣りであった。
 「南風原から三原、三原からコザ、コザから三原に戻って、それから泊だろ?」
 「コザの前は三原ではなく宗元寺だ、覚えてないのか?」
 「全く記憶に無い。俺がいくつの頃だ?」
 「2つか3つくらいだろうな。」とのこと。覚えているわきゃない。
 「三原の家はよく覚えているよ。オジー(祖父、父の父)と鮒釣りに行ったこと、釣りの餌に畑でミミズを採ったこと、オジーが畑にジーマーミ(落花生)やトウモロコシを植えていて、それを収穫したことなどもおぼろげに覚えているよ。」
 「ジーマーミ?トウモロコシ?そんなのないさあ。三原に畑は無かったよ。」
 「畑というほどのものじゃなかったかもしれない。庭の片隅だったかも。」
 「そうだったかなあ、そんなのあったかなあ。覚えてないなあ。」

 父は覚えていないが、私はちゃんと記憶に残っている。トウモロコシは、ほんの数株だったかもしれないが、確かにあった。
 今年の初めまでアパートの1階に住んでいた可愛いシングルマザーのKさん、彼女が昨年の夏、アパートの畑にトウモロコシを植えた。それが成長して花穂をつけ、実をつけたのを見た時に、子供の頃を思い出した。そう、この景色、懐かしい景色。

 トウモロコシ(玉蜀黍):穀物
 イネ科の一年生作物 ペルー原産 方言名:グスントウジン、トーフームン
 トウモロコシは「唐もろこしの意」と広辞苑にあった。唐(中国)のモロコシ、では、モロコシとは何?となる。同じく広辞苑に「イネ科の一年草。熱帯アフリカ原産・・・穀実を食用とし、また飼料に用いる。」とのこと。モロコシは唐黍と書くので、トウモロコシは唐唐黍となってややこしいので、かどうか知らないが、漢字では玉蜀黍と書く。
 本種とモロコシが似ているかどうかは不明。属は違う。トウモロコシはZea mays L.で、モロコシはSorghum bicolorとなっている。「穀実を食用、飼料」は同じ。
 高さは1.5〜2mになる。雌雄同株で、茎の先に雄花穂を1個つけ、雌花穂は2〜4個、包葉に包まれて茎の途中の葉のつけ根につける。雌花の果実が食用となる。果実は包葉に包まれたまま、穂の先に髭を出す。髭の数だけ種が付いている。
 食べて美味しいトウモロコシだが、果実は品種によって色や大きさ味に違いがある。美味しいのもあれば、そうでないものもある。美味しいものは主食となったり、スープになったり、おやつになったりする。そうでないものは油やデンプンの原料になったり、家畜の飼料になったりする。最近ではバイオエタノールの原料としての需要も多いらしい。ちなみに、ポップコーンにするものはポップコーンという品種とのこと。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.6.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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