トウゴマ(ヒマ)
 私は昨今の、少年による犯罪を憂えるのであるが、暴力に走る少年たちの気持ちが解らないでも無いのである。中学生の頃、私はひどい反抗期で、父親や母親と毎日のように言い争いしていた。父や母は、子供を縛り付けて、自分たちの望む通りの人間に育てたいという教育方針のようで、縛られるのが大嫌いな私はそれに対しすごく反発した。親は私にとって敵であった。「殺してやる」と思ったことも何度かある。
 高校生になると少し知恵もついて、「別に親の言うことはきかなくてもいいんだ」と思うようになり、そうやって自身の心に余裕ができると、父や母を横から眺めることもできるようになり、「あぁ、この人たちは一所懸命なんだ」と感じるようになった。
 暴力に走る少年たちには、「そうガツガツ生きなさんな。たまにはのんびりと周りを見てごらん。時間は楽に流れているぜ。生きるのってそう難しくは無いぜ。」と言いたい。犯罪や暴力は、やられる方もやる方もどちらも不幸になるバカな行為なのである。
 心が荒れていた中学生の頃、「殺してやる」と思いはしたが、実際にそういう行動を取ったことは無い。私はどちらかというと冷静に考えるタイプであった。「殺してやる」と逆上した時も、「そうするとどーなる」を考えるのであった。捕まる→少年院→出所→世間の冷たい目→職が無い→やくざ→不幸などと考えるのであった。生来真面目な私は、そういうのは嫌なので、犯罪に走るのを思い留まったのである。

 二ヶ月ほど前、海岸端の公園を散歩している時に、あまり見かけない植物を発見した。果実が面白い形をしているので目に付いた。写真を撮って調べる。トウゴマという名。その種は猛毒のリシンを含んでいて、2、3個食べると死ぬといわれているらしい。2、3個食べて死んだ人が昔いたのかもしれない。
 ともあれ、危険な植物である。こんなものが簡単に手に入ったら、バカな少年たちに悪用されかねない。ここで紹介するからには、そういうことに利用しないよう、犯罪はバカな行為ですよと言っておかなければならない。というわけで、上記の文でした。

 トウゴマ(唐胡麻):薬用
 トウダイグサ科の一年草(沖縄では低木) アフリカ原産 方言名:チャンダカシー
 ヒマ(蓖麻)という名前の方が有名。というか、ヒマシユ(蓖麻子油)が有名。大人になってからはほとんど聞かないが、子供の頃、その名前をよく耳にした。今回調べて、それが下剤であることを知った。母か伯母か姉の誰かが便秘症であったのだろう。蓖麻子油は本種の種子から精製された油。ヒマ(蓖麻)は漢名。
 トウゴマという名前は唐の胡麻ということであろうが、ゴマはゴマ科で本種とは遠い。全体の見た目が似ているというより、たぶん、種子の形状が似ているのであろう。あるいは、種子から油を採るというところが似ているということなのかもしれない。
 温帯では一年草で、熱帯では低木状となる。温帯の本土では一年草で、亜熱帯の沖縄では低木ということになる。高さは2〜3m。秋に黄色の花が咲き、棘のある球形の果実をつける。種子からは有用な蓖麻子油が採れるが、猛毒のリシンを含んでいて、2、3個食べると死ぬといわれている。沖縄で栽培されているという話は聞かない。

 実
 記:島乃ガジ丸 2007.1.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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