シマニンニク
 塩せんべい屋さんの経営に携わっている同級生がいる。彼女とは1年に1回開かれるクラス会で顔を合わす。クラス会は今年も1月に開かれ、彼女も参加した。
 彼女の会社が出している人気商品に「天使のはね」という菓子があり、クラス会の数ヶ月前に、ガジ丸作の『風に乗って』をそのテーマソングにいかが?と、曲の入ったCDと歌詞を渡していたのだが、クラス会で会った時、彼女はそれについて何の感想も、意見も述べなかった。『風に乗って』がテレビのCMソングで流れ、ヒットして、印税ガッポリという夢を私は抱いていたのだが、捕らぬ狸の皮算用だったようだ。

 クラス会の日から数日後、彼女の会社のメイン商品である塩せんべいに、健康ブームに乗って、ウコン味とかサクナ味とかニンニク味とかがあってもいいんじゃないかと思いついて、そのCMコピーまで思いついて、別の友人を介して彼女に提案した。
 アーサ(沖縄に産する海草)を混ぜたアーサ煎餅、
 ヒル(沖縄語でニンニクのこと)を混ぜたヒル煎餅、
 ウコンを混ぜたウコン煎餅、
 サクナ(ボタンボウフウのこと)を混ぜたサクナ煎餅、
そのキャッチコピーは、
 朝食べるアーサ煎餅、でも、夜食べるヒル煎餅 バリバリ元気。
 美肌でGOウコン煎餅、恋人ゲットで、もうすぐ花はサクナ煎餅。

 商品がヒットすればその謝礼に数万円は頂けるかもと期待したが、3ヶ月経った今も、彼女からは何の感想も、意見も無い。捕らぬ狸の皮算用であった。

 ニンニクのことをウチナーグチ(沖縄口)ではヒルということを、私は子供の頃から知っていた。子供の頃、風邪を引くと父親に「これを飲め」とヒル酒を勧められたお陰である。ヒル酒とは泡盛にニンニクを漬け込んだもの。強烈に臭かった。
 ヒル酒に用いたニンニクはシマニンニクという沖縄のニンニク。シマニンニクは概ね、丸ごと泡盛の中に入っている。数年前に友人Tからシマニンニクのハチミツ漬けを頂いたが、それも丸ごと漬けられていた。シマニンニクは粒が小さいのでいちいち皮を剥くのが面倒臭い。で、皮を剥かずに済むヒル酒やハチミツ漬けにされたりする。

 シマニンニク(島大蒜):根菜・薬用
 ユリ科の多年草 中央アジア原産 方言名:ヒィル
 ニンニクは広辞苑に「葫・大蒜」とあった。漢字源を見ると、葫は「西域の草」という意でニンニクを指し、蒜は「高さがそろって伸びる草」とのことで、ノビル(野蒜)とニンニクのことを言う。大蒜と書くとニンニクのみを指す。
 蒜はヒルと読む。方言名は『沖縄園芸百科』にヒィルと表記されてあったが、私の周りでは概ねヒルと発音している。いずれにせよ、蒜からきている。
 ニンニクは古くから世界中で栽培されており、食用、香辛料、強壮薬に利用される。日本でも歴史の古い作物とのこと。『沖縄園芸百科』に「我が国の品種は各地域の在来種がほとんど」とあって、沖縄には沖縄の在来種、シマニンニクがある。
 スーパーでよく見るのは青森産、鱗茎は7、8個の小球に分かれている。シマニンニクの鱗茎は小球の数が多い。20個ほどある。鱗茎の大きさはシマニンニクの方が小さい。従って、当然ながらシマニンニクの小球は小さい。皮むきは面倒な作業となる。
 倭国での栽培は知らないが、シマニンニクは9月中旬〜下旬に植付、2〜4月に収穫。生葉を利用する場合は8〜10月に植付、11〜2月に収穫。ニンニク芽と呼ばれるものも時期になればスーパーに並ぶ。ニンニク芽とはニンニクの花茎のこと。

 鱗茎

 大きさ比較、左が島ニンニク、右は青森産。
 記:島乃ガジ丸 2009.3.26  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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