アスパラガス
 従姉の別荘には畑がある。約10坪の広さがある。この時期はジャガイモ、キャベツ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、春菊などが収穫されている。ここ2、3年は従姉夫婦がやっているが、それまでは私の父が、隠居生活で暇なので、週末にやってきては畑の管理、農作業の全てを任されて、やっていた。
 畑は建物の表側、開けた場所にある。その畑から見ると建物の裏側になる場所にも小さな空間があって、洗濯物干し場であり、園芸作業場であるが、ごく小さな、1畳にも満たない畑がそこにある。そこに、従姉の亭主がアスパラガスを植えた。今から5、6年前のこと。アスパラガスはすくすく育ち、2年後からは収穫できるようになった。
 私の父が管理しているのは広いほうの畑だけであるが、父は親切(悪くいうと、おせっかいとも)なので畑だけで無く、並びの駐車場や庭の掃除などもしてくれる。

 アスパラガスが収穫時期となったある年ある日、その日の肴に少し分けていただこうと別荘を訪ねた。「アスパラガス・・・」とつぶやきながら、従姉の亭主は私を裏庭へ案内した。ついこのあいだまでモサモサしたアスパラガスの茎葉が一面を覆っていた場所、今年はたくさん収穫できそうだと期待していた場所、だが、そこには何も無かった。
 「おじさん(父のこと)がね。ここも掃除してくれてね。アスパラガスをね。雑草だと思って、全部、根こそぎ引き抜いてしまった。」とのことであった。
 現在は、広いほうの畑の一角にアスパラガスがある。数年前に植えられて、今年から、ほんのわずかな量ではあるが、ボチボチ収穫できるようになっている。

 アスパラガス(asparagus):鉢物・野菜
 ユリ科の多年生草本 南ヨーロッパ原産 方言名:なし
 アスパラガスは学名のasparagusから。オランダキジカクシ、マツバウドといった別名もある。オランダキジカクシは、キジカクシ(雉隠し)という植物があって、「アスパラガスと同属で、これに類似。山地に生じ、高さ約60センチメートル」(広辞苑)のこと。本種は、南ヨーロッパ原産ということからオランダとつく。
 マツバウドについて資料は無いが、松葉独活ということであろう。また、沖縄園芸大百科にはクサスギカズラという和名があり、それはおそらく、枝葉が杉に似て、這う性質がある草、ということから草杉葛なのであろう。
 「葉は退化して褐色の鱗片となり、細枝は緑色で、密に分枝」と広辞苑に説明があり、私が糸状の葉と思っていたものは細枝であるということが分かった。
 細枝が多数、密に分枝して、全体にモサモサして見える。そのモサモサした茎枝の間、地面からぴょこっと顔を出す新しい茎が食用となる。土を掘り起こして収穫するタケノコとは違い、地上に出てきて20センチばかりになったところを刈り取る。これがお馴染みグリーンアスパラガス。出てきた茎に随時土を被せ、日光に当たらないようにすると、缶詰でお馴染みホワイトアスパラガスとなる。
 モサモサが柔らかさを感じさせて良いのか、観葉植物としても多く出回っている。

 花

 芽
 記:島乃ガジ丸 2006.2.26  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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