アロエ
 休日の朝、朝食をスパゲティーにした。麺が茹であがって、鍋の取っ手に手を掛ける。熱いので布巾を挟んで掴む。コンロの火は、コーヒーの湯を沸かすために消さずにいた。鍋を流しに運ぶ。その時、鍋を掴んでいる左手が異常に熱いことに気が付いた。見ると、左手が燃えていた。コンロの火が布巾に燃え移り、布巾の炎が私の左手をローストしていたのだ。
 慌てて、鍋を放し、布巾を振り捨てて、水道の水でローストされた左手を冷やしたが、もう既に十分に火傷をしていた。見た目はさほど重症になりそうな感じでは無かったが、お湯がかかったのではない、炎でローストされたのだ。時間が経つにつれて痛みが酷くなると覚悟しつつ、とりあえずスパゲティーを食い、約束があったので、出掛ける。
 その日は友人の家に呼ばれていた。天気が良いのでバイクに乗る。10分もしないうちにバイクにしたことを後悔する。火傷を忘れていた。予想通り痛みが酷くなって左手が自由に動かない。クラッチを握るのに苦労し、指を動かすと激しく痛む。そんな痛みに耐えながら15分後、友人宅に着く。挨拶より先に火傷のことを話し、薬を所望した。
 「いいのがあるわ。ついてきて。」と友人の女房が言って、裏庭の方へ向かった。付いて行く。裏庭の小さな家庭菜園の前で彼女は立ち止まり、ナイフで、ある植物の葉を切り取った。それはアロエだった。アロエの葉の切り口から滴り落ちる液を患部に塗った。

 アロエが火傷に効くということは子供の頃から知っていたことで、親も祖父母も、親戚のおじさんおばさんもよく使っていた。しかし、これほど効果のあるものだったかと、この時あらためて驚いた。5分もしないうちに私の左手から痛みが引いた。1時間後、帰る頃には普通に動かせるようにもなった。アロエの葉を2枚、貰って帰った。
 家に帰って、貰ったアロエを風呂後に塗り、翌朝も塗り、その夜もまた塗りなどして、痛みをほとんど感じることなく、4日後にはほぼ完治した。素晴らしきかなアロエ、だった。それから数日後には、アパートの畑にアロエを植えた。今では株も増え、大きくなっている。

 キダチロカイ(木立蘆薈):薬草
 ユリ科の多肉多年生草本。分布は東アフリカ、アラビア半島など。方言名:ルグヮイ
 アロエの和名はロカイ。友人の家にあって私の火傷を治してくれたのは、沖縄に古くからあるキダチロカイ。私の畑にあるのは、大きくなってから気付いたのだがアロエベラ。アロエベラは葉の太さが8cmほど。長さは4、50cmほどにもなるが、キダチロカイは、葉は細く3、4cm、長さも30cmほどにしかならない。アロエベラは根元の方から葉を多く出し、株が増えて横に広がるが、キダチロカイは幹を直立させて上部に伸びていく。で、キダチ(木立)という名。
 どちらのアロエも前述の通り火傷には効果覿面、禿にもたぶん効く。別名イシャイラズともいい、沖縄では古くから薬草として用いられ食欲不振、胃弱の際に服用される。
 アロエ属は300余種あり、高さ10mを超えるものもあるらしい。多肉植物の多くがそうであるように、高温、乾燥に強い。観葉植物としても使いよい。

 アロエベラ

 アロエベラの花
 記:島乃ガジ丸 2004.12.10  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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