シークヮーシャー
 二昔前まで、シマー(島産のもの、沖縄県産のものという沖縄口)はイナカー(田舎風、田舎臭いという沖縄口)であり、ヤシムン(安いもの、安っぽいものという沖縄口)であり、ヤナー(悪いもの、品質の劣るものという沖縄口)であった。
 当時、同年代の若者たちは、島酒(泡盛)を飲まずにウイスキーを飲み、島歌(沖縄民謡)を聴かずにロックやフォークを聴いていた。ヒージャー汁(山羊汁)を毛嫌いし、ンジャナバーやミミガーを嫌い、豆腐ヨウや島ラッキョウの旨さを知らなかった。
 ゴーヤーをニガウリと言い、ナーベーラーをヘチマと言い、シブイをトウガンと言い、ソーキをスペアリブと言い、チマグーを豚足と言ったりした。
 四半世紀前のこと、ヒラミレモンという名の缶入りジュースが登場した。初めて聞くその柑橘系らしい果物は、実は、シークヮーシャーのことだった。「あぁ、ついにシークヮーシャーまでもが本土並みの名前になってしまったか」と嘆いたのを私は覚えている。
 本土復帰後、沖縄は本土並みになろうと必死だった。本土並みは政治、経済、教育を中心に、沖縄海洋博覧会に象徴される自然破壊をも含み、また、人々の暮らしや言葉といった民俗文化の面まで及んだ。そして、シークヮーシャーがヒラミレモンになったのだ。

 あれから20年ほどを経て、先日、テレビでシークヮーシャーが紹介された。健康食品として優れているという内容だったが、シークヮーシャーはシークヮーシャーという名で紹介された。昨今の沖縄ブーム、健康ブームは、ゴーヤーだけでなくシークヮーシャーもまた、その沖縄口(ウチナーグチ)を全国区にしてしまった。喜ばしい限りである。
 シークヮーシャーを泡盛に漬ける。主に皮の成分が泡盛に溶出して渋い味の酒になる。その酒にソーダを加えて飲む。その渋さは、友人たちには不評だが、私は大好き。
 普通の泡盛の水割りにシークヮーシャーを加えて飲むのも旨い。この飲み方は昔からポピュラーで、友人たちもこれは大好き。爽やかな香りと酸味が癖になる。

 シークヮーシャー:果樹
 ミカン科の常緑中木。国内では奄美以南に分布する。方言名:シークヮーシャー
 (ここの文は2008年4月8日に書き直し)てっきり、ヒラミレモンが和名なのかと思ったら、『沖縄大百科事典』に「ヒラミレモンは誤ってつけられた。正式な和名はシークヮーシャーである。」とあった。これを今日知った。方言名がそのまま和名の正式名称となったみたいである。方言名は他にシークヮーサーとも発音される。
 シークヮーシャーの中にたくさんの品種がある。文献には聞いたことの無い名前が並んでいる。私が知っているものは唯一クガニーだけである。そのクガニーが主流。
 南西諸島から台湾にかけての固有種の可能性があると文献にはある。性質が強いので、他の柑橘類の台木としての需要もあるらしい。性質が強いとは言うが、カミキリムシが入って枯れることがある。従姉の庭の2本はそれで枯れた。大木にはならないので庭木としても用いられる。庭の景色として楽しみ、その実を食べて楽しむ。
 収穫期は主に8月から1月。8月から10月の青い頃は酸味が強いので多くは調味料として、10月から12月はジュース用として、12月から1月の黄色く色付いたものは生食用として利用されている。花は白色で芳香がある。開花期は3月から4月。
 健康に良い(どう良いのかは忘れたが)とテレビで紹介されて以来、シークヮーシャーは大人気となって、全国に発送されるようになった。で、それ以来、沖縄では品薄で値が高い。困ったものだ。私はしかし、毎年、職場のものを収穫して、頂いている。

 花

 完熟実 黄色くなり、甘くなる。

 収穫 未熟のものは酸味が強く、調味料に向く。
 記:2004.8.24 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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