レモン
 ウチナーグチはダ行とラ行の区別がはっきりしない。「さあ」という意味のディッカはリッカとも発音される。日常語がウチナーグチである人に多かったと思われるが、その癖のついている人が標準語をしゃべると、「です」が「れす」になったりする。私が若い頃は、そういった人が回りに何人かいた。その人たちのことを発音ワルーと呼んだ。
 喫茶店に入って、ある飲み物を注文する。発音ワルーのウェイターが、
 「レスカれすか?」と聞き返す。

 オジサンという歳になってからは喫茶店に行くことが滅多に無いので、今でもあるのかどうか不明だが、私が若い頃の喫茶店にはレスカという飲み物があった。レスカとはレモンスカッシュの略である。というわけで、レモンというと、私は喫茶店を思い出す。

 レモンというとまた、梶井基次郎の「檸檬」を思い出す。何が言いたいのか意味解らなくて、途中で投げ出したので内容は全く覚えていない。高校生の頃、好意を持っていた一つ下の女子から「これいいよ、読んでみて」と言われて、「檸檬」の文庫本をプレゼントされた。何がいいのかさっぱり解らなかった私は、彼女の恋人になるには感性が幼稚なのだと自己反省し、そうなることをしばし諦めたのであった。というわけで、話の内容は全く覚えていないが、レモンというと梶井基次郎の「檸檬」も思い出す。

 梶井基次郎
 小説家。大阪市生れ。作「檸檬」「城のある町にて」など。

 レモンスカッシュ
 レモンの果汁に砂糖を加え、炭酸水で割った飲料。
 以上、いずれも広辞苑から。

 レモン(檸檬):果樹
 ミカン科の常緑中木 インドヒマラヤ山麓原産 方言名:なし
 レモン(lemon)は英語名で、おそらく学名のCitrus limon Burmannのlimonから。日本には明治の初め頃に伝わったとのことで、檸檬という字もできたみたいである。
 多くの品種があって、高さも、果実の形も、収穫時期もいろいろある。よく見かけるレモン色のレモンで、楕円形で両端が尖っている、いわゆるレモン形をしているのは、ポルトガル原産のリスボン(Lisbon)系。ほぼ球形の品種もあり、沖縄でよく見かけるものはやや丸みのあるハワイ産のメイヤー(Mayer)系。
 『沖縄園芸百科』に「大木になるのが多く」とあるが、広辞苑には高さ3mとあった。私はこれまで数本のレモンを沖縄で見ているが、それらは高さ3mほどのもの。
 同じく『沖縄園芸百科』に「概ね春に開花し、秋から冬に収穫」とあり、『沖縄園芸植物大図鑑』には「年に3回開花し、年中収穫できる」とある。これも品種による違いで、イタリア産のユーレカ(Eureka)系は四季咲き性とのこと。
 レモンの学名はCitrus limon Burmann f.で、属名のCitrusはよく耳にする。シトラス、柑橘系という意味だったように覚えている。温州もダイダイもスダチもユズも、ライムもオレンジもグレープフルーツもシークヮーサーもみんなシトラス。日本では瀬戸内海沿岸で栽培されているようだが、数は少ないとのこと。
 花は他のシトラス属と同じ白色で、形も似たようなもの。花に香りがあり、果実にも香りがある。果汁はビタミンCを多く含む。料理やカクテルに多く用いられる。

 実
 記:島乃ガジ丸 2007.9.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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