パラミツ
 年が明けての8日、建築士のNさんの家へ行く。Nさんは62歳。手書きだった図面引きを8年前からパソコンでやるようになった。50歳を過ぎてからのパソコンであった。悪戦苦闘しつつ何とか仕事をこなしていたのであるが、2年前から新しい図面作成ソフト(CADという)に替えたこともあり、悪戦苦闘は今なお続いているとのこと。
 「不具合があるので見てくれないか」と依頼があって、Nさんのところへ出かけたのであった。年末からずっとNさんの頭を悩まし続けていたその不具合、3つほどあったのだが、どれも、慣れている私にとっては10秒で直せる不具合だった。
 「私はできる男である」などと威張りたいのでは無い。私は慣れているだけである。人生の経験ではNさんにずっと劣る。ただ、CADの経験が勝っているだけである。

 正月3日、散歩の途中でカニステルの木を発見した。果実は黄色く熟していた。カニステルを食ったことが無かったので、食べてみたいと思ったのであるが、他人の庭なので勝手に採るわけにもいかず、残念に思いつつ諦めた。そのカニステルがNさんの家の庭にもあった。Nさん家のカニステルはどれもみな青かった。まだ食えないとのことであった。
 「まあまあ美味しいよ。濃い味がするよ。」とNさんから聞いた。
 Nさん家の庭には私の知らない木もあった。それも果樹とのことであった。
 「パラミツだよ。でっかい実ができる。実は幹に直接できる。実が大きくて重たいから細い枝では持たないんだろう。」などと教えてくれた。植物を紹介するHPを作っている私だけど、その植物に関しても、このように教わることはいくつもある。Nさんからもきっと、もっとたくさん教わることになるだろう。「カニステルが熟したら食べにおいで、パラミツに実がついたら連絡するよ。」と別れ際、Nさんは言ってくれた。

 パラミツ(波羅蜜):野菜・果物・薬用
 クワ科の常緑高木 原産分布はインド、ビルマ、マレー 方言名:パラミツ
 パラミツは梵語。広辞苑によると「宗教理想を実現するための実践修行」とある。般若心経で「はーらーみーだー・・・」と聞こえてくるが、それは腹一杯食べて「腹満った」のでは無く、文字にすると波羅蜜多となる。仏教における修行、あるいは苦行を指し、悟りを得るための荘厳なお言葉。そんな偉い名前の付いた果物とはいったい。
 果実は品種によって違いはあるが、形は球形か楕円形。偉い名前に値するものはその大きさ。長さは30〜60センチあり、重さは10〜20キロあるとのこと。生食するらしいが、『沖縄園芸植物大図鑑』によると、「パイナップルに似た芳香を持つ」とある。
 高さ20mになる高木で、小さな民家の庭には不向き。材は有用で家具に用いられ、樹液は接着剤、染料などにも使われるとのこと。別名をナガミパンノキという。
 写真は22日、Nさんの家を再訪した時のもの、着いた時はもう既に暗かったので全体の写真は撮れなかった。後日アップします。実ができたら実の写真も載せましょう。

 実

 葉
 記:島乃ガジ丸 2006.1.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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