パッションフルーツ
 会社で大きなミスを犯し降格させられ、女房子供には逃げられて、もはや出世や幸せなんかどうでもいいやと諦めた、まるでそんなサラリーマンのように身の回りに起きているほとんどのことを、概ねどうでもいいことだと思っている私だが、モノやコトの好き嫌いははっきりしている。食い物や酒について言えば、不味いもの(酒の不味いものの範疇はごく狭いが)は嫌いである。演歌は嫌いだが、藤あや子や石川さゆりは好きである。多くのハリウッド映画は嫌いだが、ダーティーハリーやダスティーホフマンやキューブリックなどは好きである。竹を横に割ったような性格は嫌いだが、竹を縦に割ったような性格は好きである。女のような性格の女は苦手だが、男っぽい性格の女は好きである。
 友人のKY子は、まさしくそんな性格の女性で、人妻ではあるが、私がデートを頼める数少ない女性の一人でもある。彼女にも女としてのウダウダ、グダグダ、ネチネチはいくつもあるが、そんな話を彼女からたびたび聞いたりもするが、そんな時でも概ね彼女は、「まあ、いいさ。あしたはあしたの太陽がまた昇って、あしたの風が吹くさ。」で、結局は済ませてしまう。そんな彼女の“さっぱり”が私は大好きなのである。

 数年前だったか、あるいは、もう十年ほども前になるか、ある日、そのKY子が、
 「くだものとけそうのことを調べてちょーだい」と電話してきた。
 「果物溶けそう?・・・果物も溶けそうになるほど沖縄の夏の炎天下は厳しいってことを調べるのか?」と訊くと
 「バッカじゃないのアンタ、何でアンタに果物が溶けそうなほど夏は暑いなんてことを調べさせるのよ。ク、ダ、モ、ノ、ト、ケ、イ、ソ、ウよ。パッションフルーツよ。」
 「あー、はいはいはい、パッションフルーツね。はいはい。」と慌てた私。
 パッションフルーツ、実は堅くて、夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持っているのだが、いかにも夏の暑さには弱そうな和名を持っている果物なのであった。

 パッションフルーツ:果物・蔓植物
 トケイソウ科の多年生草本。原産分布はブラジル。方言名:無し
 上述のように和名をクダモノトケイソウ(果物時計草)と言う。トケイソウの中でも果物となることからその名がある。トケイソウ科のトケイソウ属。
 甘酸っぱい味は悪くは無いのだが、種が多く、生食としては食べ辛い。そのせいか、スーパーなどではあまりお目にかかれない。ジャムやジュースなどの加工品として良い。
 時計を思わせる花も大きく目立ち、鑑賞して面白い。庭への利用としてはパーゴラに這わせ日除けとして使え、フェンスに這わせ壁面緑化ともなる。その上、実ができたならジュースにしたり、ジャムにしたりして楽しめる。結実期は6月から11月。
 追記:2010.6.4
 「種が多く生食としては食べ辛い・・・スーパーなどではあまりお目にかかれない」と書いたが、一昨年辺りからスーパーでもよく見られるようになった。私も食べ方を教わってから好きになった。先の方を切ってスプーンで果肉を掬い、種ごと食う。香りがよく生食でも美味しい。また、泡盛の水割りに少し加えると、美味しいカクテルになる。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.2.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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