フトモモ
 月一回集まる模合(モアイ、頼母子講のような相互扶助の集まりだが、飲み会の口実にもなっている)のメンバーは、ほとんどが高校の同級生で、そうでない人も年齢は一つ二つしか違わない同世代。模合は一次会であり、終わると二次会へ流れる。
 若い頃は私もよく二次会へ付いて行った。が、三十台の前半あたりからはほとんど行かなくなった。皆より肉体の衰えの進み具合が速かったというせいもあるが、二次会へ行って、隣に座った話題の少ないおネェちゃんに気を使って、場が白けないよう話題探しをするのが面倒になったせいもある。居酒屋ほど美味しい肴を出すわけでもないのに、居酒屋と同じ泡盛なのに、居酒屋より数倍高い金額を支払うという不合理さも嫌であった。
 話題の少ないおネェちゃんは、しきりにカラオケを歌うよう勧める。歌っている間は話をしなくて済むからだろうが、ところがどっこい、私はカラオケが嫌い。歌は上手い(自分で言う)のだが、機械に自分の感性を合わせるのが嫌いなのだ。伸ばしたいところは伸ばしたいし、溜めたいところは溜めたいし、さっと流したいところは流したい。のに、機械はそんな私の感性を無視して機械的(当然だが)に先へ先へと進んで行く。「おらぁ貧乏人だが、おめえの奴隷じゃねぇぞ。」と怒鳴りたくなる。

 二次会の店はたいてい、模合メンバーの誰かの知っている店となる。そういった店は、さすが沖縄なので、隣に座るおネェちゃんもカワイイ人が多い。そんなおネェちゃんが体をピッタリ摺り寄せて、上目遣いに「ねぇー、何か歌ってよ。」と言う。彼女の左手は私の股間にごく近いフトモモの上に置かれている。そーなるとだ。カラオケ嫌いの私も機械の奴隷となり、以降店を出るまで、おネェちゃんの奴隷にもなったりしたのである。
 おネェちゃんのフトモモ攻撃は効果絶大であったのだが、そのフトモモは漢字で書くと太腿。今回紹介するフトモモは植物のフトモモで、漢字で書くと蒲桃。桃とあるが、桃はバラ科で、サクラやウメと一緒。こちらはフトモモ科で両者の種は遠い。果実の味も似てはいない。食感も香りも違う。文献には「ビワに似た芳香」とある。

 フトモモ(蒲桃):果樹・公園・防潮風
 フトモモ科の常緑高木 原産分布は奄美以南、インド、マレー半島 方言名:フートー
 名前の由来は資料が無く不明。漢字の蒲桃は広辞苑にあった。音読みのホトウで広辞苑を引くと「ブドウの別称、フトモモの漢名」とあった。ということで蒲桃は漢名。中国から沖縄に伝わって、中国読みに近いフートーとウチナーンチュに呼ばれ、それが倭国に渡り、フートーモモからフトモモになったのかもしれない。
 ちなみに蒲桃の蒲はガマと読んで、植物のガマのことを指す、だけでなく、蒲という字は植物という意味もあるようだ。そういえば蒲公英、菖蒲などに使われている。
 高さは10mほど。耐潮風性が強いので、防風防潮林として使える。萌芽力が強く成長も速いので適宜の剪定を要する。民家の庭には使いづらい。
 花は、同科のバンジロウに似て長いおしべが多数ある白い花、バンジロウより大型で、開花期は3月から4月。果実は芳香があり生食できる。果肉は白色で味は淡白。結実期は6月から7月。「果実はビワに似ていて生食できる」とあったが、私は未経験。

 花

 実
 訂正加筆:2011.7.17
 記:島乃ガジ丸 2005.4.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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