バンジロウ
 ゴーヤーの和名がニガウリであるということは子供の頃から知っていた。その他、ナーベーラー(ヘチマ)、ネリ(オクラ)、タマナー(キャベツ)、チデークニ(ニンジン)、バサナイ(バナナ)、パパヤー(パパイヤ)などの和名も子供の頃から知っていた。
 バンジロウという名前は、確か15年ほど前に初めてお目にかかった。
 鎌倉時代の武将、伴次郎常善(とものじろうつねよし)は、伴大納言絵巻で有名な伴善男(とものよしお)の子孫にあたり、12世紀後半、平家の一員として働いた。壇ノ浦の戦いの後、九州から琉球へと落ちのび、この地で、後の中山王舜天を助け、中山興隆の礎を築くこととなった。彼の活躍は、「伴次郎物語」として今に伝えられている。
 バンジロウという名前を見て、そんなことを私は想像した。

 子供の頃、近所には庭先にバンシルーの木を植えてある家がちょくちょくあった。その家の人に断ることも無く、もいで、食べた。怒られたことは無かった。どこにでもある、放っておいても実をつけてくれるので、収穫してもさほど商品価値は無いということなのだろう。近所のガキ共に勝手に採られたとしても、怒るほどのことでは無かったようだ。
 学術的にどうかは知らぬが、一般にイシ(石)バンシルーとミジ(水)バンシルーとに分けられ、イシバンシルーの方が甘くて美味しい。ミジバンシルーは名前を聞くと美味しそうだが、"水"は"みずみずしい"のでは無く、"みずっぽい"ということ。

 バンジロウ(蕃石榴):果樹
 フトモモ科の常緑高木 原産地は熱帯アメリカ 方言名:バンシルー
 収穫期は8月から9月
 全国的にはグァバという名前で知られている。果実は独特の甘い香りがあり、生食でも美味しく、ジュースなどにしても良い。しかし、生食としてはパイナップルやマンゴーに比べればさほど美味しいと言えるものではない。今一つメジャーになれない理由だ。
 その葉を乾燥させたグァバ茶はよく知られた健康飲料。健康食品として土産物屋、スーパー、デパートなどの棚にも並んでいる。
 漢字の蕃石榴、石榴はザクロ、蕃という字は外国という意があるらしい。ザクロの原産地は地中海からヒマラヤ地帯とあるので、古くから中国にあったと思われる。熱帯アメリカ原産のバンジロウはずいぶん後になって入ってきたのだろう。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2004.9.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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