ヤマドリヤシ
 親しみのあるヤシをまだ紹介していなかったということで、先週に引き続いて今週もヤシ。今週は親しみのある数種の中からアレカヤシ。このページのタイトルがヤマドリヤシとなっているが、それが、アレカヤシの和名の本名となっている。
 アレカヤシはその名前で、観葉植物の鉢物として園芸店でよく見かける。若い頃、私もアレカヤシの鉢物を一つ部屋に飾っていた。だから親しみがある。また、アレカヤシは他のヤシとは見た目に大きな違いがあり、若い頃の私でも、アレカヤシをヤシという名前で一括りにしていなかった。その大きな違いとは、アレカヤシが株立ちであること。
 アレカヤシの和名の本名がヤマドリヤシであるということは後年知った。ヤマドリヤシとはなかなか面白い名前なので、今回調べてみた。
 ヤマドリというと、山取りと書いて造園用語にある。「地植えされた植物を、移植するため、根回し無しにその場で掘り取る」ことを言うが、広辞苑にもある。「植物などを、山の自生地で採集すること」である。
 造園用語の山取りにはリスクが伴う。根回し無しということは、移植後の生育が不調になる可能性が高くなるということだ。ヤマドリヤシはそのリスクが少ないからその名前が付いたのかと考えたが、確かに、ヤマドリヤシは移植が難しいということは無い。
 ヤマドリというと、もう一つ山鳥も考えられる。山鳥は「山にすむ鳥」(広辞苑)のことだが、ヤマドリヤシの葉は深い緑色で光沢があり、美しい。それを山鳥の羽に見立ててのヤマドリということなのかもしれない。正確なところは不明。

 ヤマドリヤシ(山鳥椰子):公園・鉢物
 ヤシ科の常緑高木 マダガスカル原産 方言名:なし
 ヤマドリヤシにはコガネタケヤシという別名もあるが、それらよりもアレカヤシという名前の方がずっと有名かもしれない。園芸店の観葉鉢物のほとんどにはその名札が付けられている。私もヤマドリヤシではピンとこないが、アレカヤシならすぐにわかる。
 アレカという名は、ジャングルを探検していた一行が、「教授、あれが目印の椰子の木です。」、「そうか、あれか。」といった逸話からきている、のでは無く、おそらく、英語名のAreca palmから。もう一つのコガネタケヤシ(黄金竹椰子)は見た目から。全体に明るい色をしていて、幹に節があって竹のように見える。ところが、肝心のヤマドリヤシの由来が不明。山鳥という字は『沖縄園芸植物大図鑑』にあった。
 高さは10mほど。陽光を好むが半日陰でも育つ。風を強く受けると葉が枯れるので、風の弱い場所に植栽する。耐陰性があるので室内の観葉植物にも向く。葉に照りがあって美しいので花屋に切り葉としても売られている。花は目立たない。

 花序
 記:島乃ガジ丸 2008.3.29  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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