シマトネリコ
 若い頃(十代~二十代)、目に見えないものに敏感だった時期がある。何でもない時、何でもない道を歩いていたら、急に冷気が襲ってきて、全身の毛が逆立つという経験をしている。それは何度もあったと思うが、今でもはっきり覚えているのは2度。1度目は東京、吉祥寺に住んでいる頃、住んでいるアパートの近くの小道で。2度目は大学を卒業して、沖縄に帰ってからすぐのこと、那覇の繁華街、国際通りから少し離れた筋道で。
 生来、「何とかなるさ」(何ともならないことも多くあったが)という性格なので、そういう経験をした場所でも、特に気にすることなく何度も通っていた。「何とかなるさ」が功を奏してか、その後、同じような経験はどちらも無い。国際通りから少し離れた筋道は今でも年に2、3度は通っているが、感性の鈍ったオジサンの毛はビクともしない。

 国際通りから少し離れた筋道の突き当たり、その右手にはまあまあ広めの公園がある。まあまあ広めというのは去年気づいた。いつもは傍を通るだけで、目に見える範囲内の広さであろうと勝手に想像していたのだが、去年の夏、中へ入ってみたら、意外と奥行きのある公園であることに気づいた。那覇の一等地、地代の高い公園である。
 その時そこで、樹冠が白いものに覆われている木を発見する。最初は花かと思ったが、近づいて見ると、果実のようであった。翼のよな形、モミジの果実に似ている。

 シマトネリコ(島梣):公園
 モクセイ科の常緑・半常緑高木 琉球列島、台湾、他に分布 方言名:ウヌハカギー
 トネリコが広辞苑にあった。梣と書き、「モクセイ科の落葉小高木。本州の山地に自生・・・材は家具、スキー、野球のバットなど」とある。本種はトネリコと同属で、似ている。琉球列島に自生することからシマ(島)が付いてシマトネリコ。
 別名をタイワンシオジという。シオジは塩地と書き、「モクセイ科の落葉高木。西日本の山地に自生」(広辞苑)のこと。これもトネリコと同属。シオジに似た南方系の樹木ということからタイワンシオジとなる。タイワンには南方のという意味がある。
 「材は野球のバットなど」に用いられるというのは聞いたことがある。トネリコの材は硬く、粘りがあるらしい。シマトネリコがバットの材になるかどうか不明だが、これも材は硬いとのこと。方言名のウヌハカギーは「斧刃欠ける木」という意味。方言名は他にジンギ、コナツキとあるが、意味は不詳。ついでに、トネリコの意味も不詳。
 高さ20mほどになる。公園の緑陰樹に向く。萌芽力がやや弱いので、強い剪定は行わない。硬い材は建築などに利用されるとのこと。
 花は黄白色で枝の先に付き、樹冠を覆う。開花期は4月から6月。花後の翼果(果実に翼が付いている)も目立つ。中国、フィリピン、インドなどにも分布する。
 ちなみに学名
 シマトネリコ Fraxinus griffithii C.B. Clarke
 トネリコ Fraxinus japonica
 シオジ Fraxinus spaethiana Lingelsh

 花

 実

 葉

 幹
 記:島乃ガジ丸 2009.1.14  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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