セイロンニッケイ
 友人のO夫妻が週末農夫となった、のは昨年の春頃だったか、一度だけ彼らの週末畑を見に行った。6月の梅雨が明けて間もない頃であった。
 畑は浦添市内の幹線道路沿いにあり、広さは200坪ほど、畑小屋として利用されている建物はコンクリートブロック造りの強固なもので、水道、電気が引かれ、プロパンガスも設置されていて、電灯があり、冷蔵庫があり、ガスコンロもシャワーもある。畑小屋はもう一棟あり、そこはトタン葺きの小さな木造で、農作業場所といったところ。そんな設備のしっかりした所を何故O夫妻が使っているかというと、畑の持ち主が爺さんで、ちょっと体を悪くして農作業ができなくなり、やってくれる人を探していたらO夫妻の友人が先ず手を揚げ、そこからO夫妻にも声がかかったとのこと。

 6月、小雨のポツポツ落ちる中、Oの女房E子の案内で彼らの週末畑に行く。まあまあ管理されていて、多くの作物が育っていた。それらの作物よりも、畑の真ん中にドンと立っている大きな樹木に私は興味を惹かれた。知らない木だ。
 「そこの大きな木、何?果樹なのか?」と訊くと、
 「シナモンよ、珍しいでしょ、持ち主のオジーが植えたんだって。」とのこと。シナモンは確かに珍しい。私は、それと知って見たのは初めてであった。皮を少し剥いで、匂いを嗅いでみる。確かにシナモンの香り、アップルパイが思い浮かんだ。

 セイロンニッケイ(錫蘭肉桂):公園・香辛料
 クスノキ科の常緑高木 原産地はインド、スリランカなど 方言名:なし
 名前の由来はおそらく英語名(Caylon Cinnamon tree)から。その英語名は原産地の一つにセイロン(スリランカ)あり、ニッケイと同属(Cinnamomum)だから。
 そのニッケイ(肉桂)は日本にもあり、徳之島、沖縄島北部、久米島、石垣島などに自生があるらしい。ニッケイを英語ではシナモン(Cinnamon)と言う。ところが、本種は別名としてシナモンとも呼ばれる。シナモンはアップルパイなどに用いられる香辛料として有名、その香りは独特で、食欲をそそる良い香りだ。ニッケイも本種も香味料として用いられるが、別名のシナモンは、「これぞシナモン」ということなのであろう。ネットで菓子関連のサイトを覗いてみたら、本種のことを「最もさわやかな香りで辛味はほとんどありません」、「セイロンニッケイが最上級とされる」などとあった。
 ついでに、菓子関連のサイトにはカシアという名のシナモン属も紹介されていて、現在市販されているシナモンスティックはカシアから作られているとのこと。
 高さは8〜17m、葉は湾曲しており、先は尖る。若葉は赤みを帯びる。樹皮は香り高く、香味料、香料、薬用に用いられる。
 学名は、セイロンニッケイ Cinnamomum zeglanicum Breyn.
 ニッケイ Cinnamomum loureirii Ness.
 カシア Cinnamomum cassia Ness.
 別名はシナモンの他、セイロングスともある。

 葉
 記:島乃ガジ丸 2012.1.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
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