ナギ
 植物にイヌという名前の付くものはいくつもある。イヌは犬のことを表す。犬にとっては「バカにしないでよ!」ということになるが、イヌは「劣ったもの」という意味を含んでいる。イヌツゲはツゲより少し劣ったツゲということになる。
 沖縄では庭木としても、木材としても一級品として扱われるイヌマキではあるが、それにもイヌが付く。ならば、イヌと付かないマキという木はさぞかし・・・と調べる。
 マキ(槙)は、「イヌマキ・ラカンマキ・コウヤマキなどの汎称」(広辞苑)とのことである。この中でコウヤマキは姿美しく、材も優れているためホンマキとも呼ばれるようだが、コウヤマキ科コウヤマキ属コウヤマキという世界に1科1属1種のみの植物で、マキ科では無い。普通、マキと言えばイヌマキのことを指すとのこと。イヌマキもけして、マキとして劣っているわけはないようである。では何故イヌが付くのかと言うと、スギの古名をマキと言い、杉に比べれて劣っているということらしい。確かに、人の生活の上ではスギは使い勝手が良く、利用価値も高い。まあ、スギには負けるか。

 イヌマキを調べている時にマキ科を調べ、「マキ科は、日本にはナギとイヌマキの2種が自生している」ということを知った。イヌマキが庭木として、柱材として、あるいはキオビエダシャクの食草としてよく知っていた私は、「えっ、2種しかないのか」と思い、もう1種のナギにも、「どんな木?」と興味を持った。であったが、長い間、ナギの実物に出会えなかった。それが、先月の四国の旅で、たまたま散策した高知城で出会った。

 ナギ(梛・竹柏):公園
 マキ科の常緑高木針葉樹 原産分布は和歌山以南、沖縄、他 方言名:ナジ、ナージ
 ナギという音は凪からきているのかもしれない。凪は「波がおだやかになること」(広辞苑)であり、「和ぎ」とも表記する。漢字の「梛」の那には「やわらかい」という意味があり、全体では「しなやかな木」(漢字源)を表すとのこと。年中緑の葉をつけ、姿がほとんど変わらないことから「落ち着いた、おだやかな」ということでナギと呼ぶようになったのかもしれない。以上は私のテキトーな推測です。念のため。
 葉に特徴がある。光沢があり、形は披針形で、平行脈がいくつも走っている。短い竹の葉のように見える。もう一つの漢字「竹柏」は漢名とのことだが、竹に似た葉を持つ常緑樹といったようなことではないかと思われる。
 高さ10mほどになる。日陰地に適するが、陽光地でも生育する。成長は遅い。花は淡黄色で小さく目立たない。開花期、本土では夏らしいが、沖縄では3月から4月。
 沖縄ではあまり見ないが、本土では神社などでよく見かけるらしい。樹皮が染色に使われ、材も床柱や家具に利用されるとのこと。

 葉

 幹

 沖縄産
 説明文に復帰20周年記念とある。17年経っているのにまだこんな・・・。
 記:島乃ガジ丸 2006.7.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
inserted by FC2 system