イジュ
 5月17日の土曜日、休みだというのに朝早い時間、8時半に家を出る。車に乗って出かけた場所は読谷村、読谷村共同販売センターという村の特産物を置いてある店。有名な焼物の他、農産物も置いてある。家からは1時間ちょっとのドライブだ。
 共同販売センターに用があったわけでは無い。が、店内を覗くと、私の好物である紅芋チップ塩味があったので、買う。無農薬ダイコンが1本200円だったので買う。シマバナナが1房(15本ほど)100円だったので買う。無農薬ダイコンも「安!」と思ったが、シマバナナは那覇で買うとその大きさで5、600円はする。「激安!」であった。しかも、店のオバーは大きなバナナ(台湾バナナ)を4本オマケしてくれた。
 それはさておき、わざわざ読谷村共同販売センターまでやってきた目的は、イジュの木の写真を撮るためであった。そこの駐車場にイジュの木がある。それは何年も前から知っていた。そして、今が花の時期(4月下旬から6月)である。

 イジュは琉歌(和歌に似た韻文)に詠われるほど、その花の盛りは美しいものとされている。そして、イジュは奄美諸島以南に生息し、本土には無い。よって、沖縄を代表する花木と言っていい。沖縄の植物としてはガジュマル、モクマオウ、ホウオウボク、ナンバンサイカチなどと共にぜひとも紹介しなければならない植物の一つである。であるのに、その紹介が遅れたのは、私の日常の行動範囲内にイジュが無いからである。
 イジュは酸性土壌を好み、アルカリ土壌である沖縄島南部には生息しない。なので、私の日常の行動範囲内には無いのである。そしてまた、わざわざ1時間以上も車に乗って、イジュの写真を撮りに行こうという情熱が私には無かった。この日は、かねてから宜野湾市の親戚に頼まれていた仕事をやることになっていて、そのついでなのであった。

 イジュ(伊集):公園
 ツバキ科の常緑高木 奄美以南の南西諸島 方言名:イジュ、イズ
 イジュはウチナーグチ(沖縄口)の呼び名で、それがそのまま和名となっている。イジュというウチナーグチの由来は不明。イジュ(伊集)という地名はある。沖縄島中部の中城村にある部落名。イジュ(伊集)という姓もある。
 奄美諸島、沖縄諸島、八重山諸島に自生する固有亜種で、沖縄島にも自生するが、私の住む那覇には無い。ちゃんと確認はしていないが、宜野湾市にも無い。読谷村以北で私は確認している。酸性土壌を好むとのことで、そうである沖縄島中北部にはあり、そうでない南部では生育しにくいようだ。小笠原には別亜種のヒメツバキがあるとのこと。
 高さ20mに達するが、自然に整った形になるので民家の広めの庭に使える。テレビで民家のイジュを紹介していたが、それは、剪定して盆栽仕立てになっていた。
 花は枝先にかたまってつく。ツバキに似た一重の美しい白い花が、樹冠を覆うように咲き、花の盛りは歌(琉歌)に歌われるほどの見事な景色となる。開花期は4〜6月。
 半日陰を好むが、陽光地でも十分生育している。よく陽の当たる斜面で、緑の中で白い花を目立たせている。酸性土を好み、アルカリ土壌の沖縄島南部には自生しない。

 花

 イジュの咲く山肌
 記:島乃ガジ丸 2008.5.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
inserted by FC2 system