ホソバムクイヌビワ
 先週、文献の写真がどこにあるか特定できるものもあると書いて、マテバシイを紹介したが、今回紹介するホソバムクイヌビワは、100%の確信ではないが、おそらくこれだろうと思っている固体を知っている。写真を撮って、「あれ、これ、この背景、文献の写真と同じかもしれない。」と気付いたのはもう2年ほども前のこと。
 写真のものが文献のものと同じ個体かどうかは別にして、写真と同じホソバムクイヌビワには違いないとは、写真を撮った2年前に思っていた。しかし、にもかかわらず、長く紹介できずにいたのはちょっと引っかかるところがあったから。
 名前のホソバに引っかかっていた。ホソバがあるのならホソバの付かないただのムクイヌビワもあるはず。もしかしたらこれは、ただのムクイヌビワの方かもしれないと思ったからだ。ただのムクイヌビワは図書館から借りた別の文献にあった。
 両者の写真を見比べてもホソバがほっそりしているようには見えないのだが、説明を読むと、葉の大きさが違った。長さも幅もムクイヌビワの方が倍近くあった。
 というわけで、写真のものはホソバムクイヌビワと確定。

 ホソバムクイヌビワ(細葉椋犬枇杷):公園
 クワ科の常緑中木 奄美大島以南の南西諸島、他に分布 方言名:不詳
 イヌビワと同じクワ科イチジク属であり、ビワには劣る小さな果嚢をつけることからイヌビワとなる。ホソバは葉が細い(というほど細くも無いのだが)ことから。ムクについては、椋(ムクノキ)はニレ科の落葉高木で、沖縄には自生せず、私も見たことが無いので本種と似ているかどうかは不明。ただ、ムクノキは「葉面はざらざらして物を磨くのに用いる」(広辞苑)という点で似ている。そこからムクとついたのかもしれない。
 葉は楕円形、うすい革質で、先が尾状に尖る。長さ5〜11センチ、幅2〜5センチ。両面ともに硬い毛があって、特に若葉はざらつくとのこと。葉柄は4〜12ミリ。
 果嚢は葉腋に1、2個つく。球形で有毛。径7〜8ミリ。赤く熟す。
 幹は直立し、高さは15mほど。小枝が細く、やや下垂する。分布は上記の他、台湾、南中国、インド、マレーシアなど。学名はFicus ampelas Burm. f.

 実

 葉
 記:島乃ガジ丸 2009.1.9  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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