テイカカズラ
 テイカカズラに方言名は無いが、その変種であるリュウキュウテイカカズラにはある。ウクヮンシンカンダと言う。文献にその説明は無いが、漢字で書くとたぶん御冠船蔓(カズラのことをカンダと発音する)となる。であれば、テイカカズラは藤原定家に由来しているらしいので、和名、方言名のどちらも由緒正しき名前ということになる。
 御冠船(うくゎんしん)は冊封使(和語ではサッポウシ、またはサクホウシ、沖縄ではサップウシと発音)の一行が乗ってくる船。冊封使とは「中国で、天子の勅を奉じて周辺諸国に使わし、封爵を授ける使節」(広辞苑)のこと。つまり、中国王朝が新しく琉球王になるものの、その即位を認めるために遣わした使節。その冊封使の乗った船を何で御冠船と呼ぶのかというと、新王に授ける冠こそが、船の主役だったからであろう。
 さて、じゃあ、何故リュウキュウテイカカズラが御冠船蔓なのか、これも文献に詳しい記載が無い。ただ、『沖縄植物野外活用図鑑』に、細長い莢状の果実が、「裂開すると長い冠毛のある種子が現れる」との記述があった。この「冠毛」が、新王に授けられる冠の羽かなんかに似ているところから御冠船となったのではないか、と考える。

 テイカカズラ(定家葛):地被・パーゴラ
 キョウチクトウ科の常緑蔓性植物 本州以南、沖縄、他に分布 方言名:なし
 テイカを広辞苑でひくと、定家という項目があり、その説明文の中に「定家葛」という文字が見つかった。定家は鎌倉前期の歌人、藤原定家(ふじわらのていか)のことであることについては知っていたが、『定家』が能の題目の一つであることは知らなかった。その能の説明に定家蔓があった。「藤原定家と式子内親王の激しい恋の物語。死後も内親王の墓に定家葛がまつわりついたという伝説を脚色」とのこと。それまで名無しのカズラだったのが、その時からテイカカズラと呼ばれるようになったということかもしれない。
 気根を発生させ、それが他のモノに絡み付いて(吸着型という)伸びる。白い小さな、かざぐるまのような形の花には芳香がある。開花期は3月から7月。

 花


 リュウキュウテイカカズラ(琉球定家葛):地被・フェンス
 キョウチクトウ科の常緑蔓植物 九州南部以南に分布 方言名:ウクヮンシンカンダ
 テイカカズラの変種。学名だと、テイカカズラがTrachelospermum asiaticumで、本種はTrachelospermum asiaticum Nak.var.brevisepalum T.Tsiangとなっている。
 沖縄の山野に自生しているところからリュウキュウという名前がついている。一般にも広く知られていたようで、上述の通り、方言名もちゃんとある。
 陽光地を好み、環境の良いところでよく生育する。ツルの長さは3〜5m。テイカカズラ同様、気根を発生させ、それが他のモノに絡み付いて伸びる。花も同じく白花で、芳香がある。開花期は4月から6月。別名オキナワテイカカズラ。

 花
 記:島乃ガジ丸 2006.5.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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