サルカケミカン
 那覇生まれ育ちの私は、ウチナーグチ(沖縄口)があまり話せない。周囲の同級生に比べれば、沖縄への愛情が深い分、ウチナーグチの聞き取りはできる方だと思うが、首里高校に入って、首里出身の同級生たちがウチナーグチをベラベラしゃべるのを聞いた時は驚いた。同じ那覇市でも、首里はやはり城下町、特別な場所なのであった。
 同僚のOさんは、私同年生だが早生まれなので学年は1つ上。彼は、ヤンバルと通称される本島北部の出身。田舎の生まれ育ちだけあって彼はウチナーグチが上手い。首里出身の同級生たちよりもずっと上手い。彼はベラベラでなく、ペラペラとしゃべる。また、話すのが上手いだけで無く、ウチナーグチの単語もよく知っている。
 ある日、Oさんが「サラカチャーに腕を引っ掻かれてしまった。」と言う。ウチナーグチの単語はある程度私も知っているが、サラカチャーは初耳。「腕を引っ掻かかれる」と言うからには動物なのであろう。人間を引っ掻く動物とは?・・・ネコの類?
 いろいろ想像してみたが、それらしきものが思いつかなかったので、
 「サラカチャーって何?もしかしてネコのような動物じゃなくて、カマキリみたいな虫なの?」と訊いた。初めキョトンとしていたOさんは、すぐに大笑いした。

 サルカケミカン(猿掛蜜柑):添景・盆栽
 ミカン科の常緑半蔓性植物 原産分布は南西諸島、台湾、他 方言名:サラカチャ
 枝に鋭い棘があり、猿がそれに引っ掛かるミカン科の植物なのでサルカケミカンという名前。方言名のサラカチャ、『沖縄大百科事典』に「サラは猿の意」とあったが、猿ならサルカチャとなるはずだし、沖縄に猿はいないし、で、サラは猿の意味ではなかろうと思うのだが、だったら何?と問われても答えられない。カチャは「掻く物」だと想像できるが、サラを皿だとすると、皿を掻く物ということになり意味不明。
 葉はアゲハチョウの食草となる。葉や茎は胃や喘息の薬となる。材質が緻密で硬いのでパイプの材料として用いる地域もあるらしい。沖縄では聞かない。
 盆栽材料としても利用される。12月から2月に黄緑色の花が葉腋から数個出て開花するが、小さくて目立たない。春になって球形の果実となる。果実は橙色に熟すが、食用とはならない。食えたとしても小さい(7ミリ内外)ので、商品価値はなかろう。
 海岸近くの林内に自生している蔓植物。枝に鋭い棘がある。陽光地を好むが、半日陰でも十分生育する。自生地は大木の下などにあって、陽はあまり射さない場所が多い。成長が速く樹形が乱れやすいので、適宜の剪定を要する。

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.7.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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