ノウゼンカズラ
 「花も嵐も踏み越えて・・・」と始まる歌を知っているのは、もうだいぶ年配の方々であろう。私の母親の世代かそれよりもさら上。その母親からか、あるいは親戚のおばさん連中から聞かされたのか覚えていないが、「愛染かつらの歌」として私の記憶にある。調べると、歌の題は「愛染かつらの歌」では無く、「旅の夜風」といい、「愛染かつら」はそれを主題歌とした映画のタイトルであった。映画は1938年の上映。
 「花も嵐も踏み越えて」はしかし、強烈な印象を子供の私の心に残している。「いいことも悪いことも踏み越えて、幸せも不幸せも踏み越えて」いったい何処へ行こうとしているのか、何をしようとしているのか、イメージが膨らむ。「愛染」という言葉から想像すれば、ドロドロの恋愛物語だと想像され、少年の股間を疼かせたのであった。

 職場の、新しくなる前の建物の、コンクリートブロックの壁沿いにノウゼンカズラの木があり、ブロックの壁に吸着しつつ、よじ登って屋根の上にまで伸びていた。オレンジ色のきれいな花が咲くので、花の季節になると、たびたび通行人から名前を聞かれることもあって、それがノウゼンカズラであることは、私も10年以上前から知っていた。漢字で表すと「濃染葛」であろうと、これは私が勝手に想像していた。
 愛染よりさらに濃く染まる。ドロドログチャグチャを妄想する。ちなみに、愛染とは仏教用語の一つで、広辞苑によると「むさぼり愛し、それにとらわれ染まること。」とあった。「むさぼり愛す」とはまた激しい言葉。いかにも「花も嵐も踏み越えて」である。
 しかし、ノウゼンカズラは「濃染葛」では無く、「凌霄花」と漢字で書き、ドロドログチャグチャとはまったく無縁の、青空に映える明るい夏の花。

 ノウゼンカズラ(凌霄蔓):フェンス・パーゴラ
 ノウゼンカズラ科の蔓性落葉植物 原産分布は中国 方言名:無し
 近くに壁面があると、幹や枝の節々から付着根を出して張り付いて伸びる。比較的しっかりした幹と枝を持つので、壁面が無くとも単独で半ツル状の添景としても使える。
 陽光地を好み、成長は速い。環境の良い場所では生育が良く、枝をぐんぐん伸ばすので、適宜の剪定を必要とする。伸びた枝は下垂して、その先に多くの花をつける。赤橙色のラッパ状の花は5月から7月に開花。ヒメノウゼンカズラという種もある。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.7.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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