テンジクボタン
 植物の名前には英語名、あるいは学名を和名にしたものも多いが、なるべく漢字表記のできる和名で紹介したいと思っている。漢字は一つ一つの字に意味があるので、漢字で表記された名前を見ると、それがどのようなものであるかを想像できることが多い。
 例えば、ササウチワ(笹団扇)、葉が笹の形、花が団扇の形だろうなと想像できる。スパティフィラムのこと。ヒゴロモソウ(緋衣草)は緋色の衣をまとったような花の付き方であろうと想像できる。サルビアのこと。モンテンジクアオイ(紋天竺葵)は、葉、または花に紋があり、天竺(インドのことだが南方全般も含む)から伝わり、葉、あるいは花が葵に似たものであろうと想像できる。ゼラニュームのこと。
 今回紹介するテンジクボタン(天竺牡丹)、天竺はゼラニュームと同じで天竺、または南方から伝わり、花の形がボタンに似ているのだろうと想像できる。ダリアのこと。じつは、このダリアもゼラニュームも、スパティフィラムもサルビアも、その名で有名で、漢字付きの和名はあまり有名では無い。私も、どれも調べて初めて判ったこと。
 漢字表記は見て判りやすいが、言葉そのものは覚えにくかったりする。ダリアなんて、ダリアというだけできっちり判る。短くて覚えやすいし、話も作りやすい。
 「むっ、妖しい気配、そこにいるのは○○○!」なんてね。お後がよろしいようで。

 テンジクボタン(天竺牡丹):花壇花卉として栽培
 キク科の多年草 メキシコ〜グァテマラの原産 方言名:なし
 テンジクボタンとは聞き慣れない名前だが、ダリアのこと。ダリアはとても聞き慣れている。テンジクボタンのテンジク(天竺)はインドのこと、原産地は中米だが、ヨーロッパからインドを経由して日本へやってきたのかもしれない。花の形が牡丹に似ているのでボタンとつく。ダリアの由来は『沖縄園芸百科』に「スウェーデンの植物学者アンドレアス・ダールの名にちなんで」とあり、広辞苑にも同様の記述があった。
 古く(18世紀)からヨーロッパで栽培、品種改良が行われ、1985年発行の『沖縄園芸百科』によると「3万種以上」の園芸品種があるとのこと、それから25年も経った現在ではさらに多くの品種があると思われる。
 『沖縄園芸百科』には花形による大きな分類が紹介されている。デコラティブ種:25センチ以上の大輪になる。コラレット咲種:カラーと呼ばれる副弁がついている。カクタス咲種:八重咲き。アネモネ種:花弁の外側は平弁で、中心部は管状花。その他、ポンポン咲種、シングル咲種、ピーアニー咲種の7種がある。それぞれにまた、小さな形の違いがあり、色も赤・橙・黄・白・桃・紫などさまざまある。
 高さは1〜2メートルほどになる。塊根という芋状の球根を春に植える。原産地が高原ということで、暑さには弱い。沖縄の夏では生育が衰えるとのこと。
 原産地メキシコの国花とされている。
 記:島乃ガジ丸 2010.11.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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