スイレン
 もう10年近く前のことになるが、アメリカのワシントンDCにあるナショナルギャラリーを訪れた。ある女に会いに行くために。女の名前はサバサ・ガルシア夫人、若いけれども人妻である。彼女に初めて会ったのは、そのまた5年ほど前に同じナショナルギャラリーを訪ねた時だった。私は、一目惚れしたのであった。
 しょせん叶わぬ恋と諦める。諦めの速さは私の長所で、「きっぱり吹っ切る」は得意である。ただ、彼女の写真を部屋に飾ることはした。真っ直ぐ正面を見つめる切なげな彼女の瞳は、私が正しく人を愛することができるという自信を与えてくれる。
 再び会った時も、彼女は変わらずにいた。同じ場所で、同じ切なげな目で私を見つめた。同じ服、同じ姿勢でそこにいた。何一つ変わらないサバサ・ガルシア夫人。彼女を描いたのはゴヤ。ゴヤは18世紀スペインの宮廷画家、宮廷画家でありながら労働者を描き、不思議な世界を描いた異端の画家。私はゴヤの大ファンになった。
 日本人の好きな画家トップ10には必ず入るという印象派のモネ、実は私も若い頃は、今は最も好きなゴヤよりも、あるいはピカソよりもマチスよりもモネの方が好きだった。モネ以上にこの世界の表情を伝えることのできる画家はいるまい、と思うほどであった。特に晩年の「睡蓮」は、深い哲学的な意味を感じさせてくれていた。
 そのスイレン、実物を見ても、私には何の哲学も生まれ出ない。派手できれい。ゴージャス。叶姉妹(最近見ないけど)みたい。突き出た胸とくびれたウエストは見ていて楽しい。スイレンも、その突き抜けた明るさと美しさが、見ていて何か楽しい。

 スイレン(睡蓮):水景
 スイレン科の多年草 原産分布は熱帯、温帯地域 方言名:なし
 スイレンは、スイレン科スイレン属の水草の総称で、世界の温帯、熱帯地方に50種ほどあるらしい。日本の山地の沼や池などには、白色の花を咲かせるヒツジグサ(羊草)というスイレンが自生するようであるが、写真のものがそれであるかどうかは不明。
 スイレンという名は、漢名の睡蓮からきている。昼に咲いた花が夜には閉じるから睡、形がハスに似ているので蓮、ということ。
 水底の泥の中に根を這わす。その根茎から長い葉柄が伸びて、葉が水面に平たく浮く。花茎も水面上に顔を出して、その先に一輪の花を咲かせる。花色は白、桃、紅、青、黄、紫など多種あって、大型で、花弁の数も多く、形は美しい。開花期は夏。
 ヒツジグサは、「未の刻頃に開花するというのでこの名がある」と広辞苑にあった。

 奈良産

 名古屋産

 北海道産
 記:島乃ガジ丸 2005.9.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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