シラン
 友人のSは正直者で寂しがり屋であると、私は判断している。
 彼の家は私の住まいから近くにあり、訪ねることが私はたびたびある。いや、たびたびあった。そう、数年前までは年に数回はあったのだが、ここ2、3年は1年に1回あるか無いかという頻度になっている。彼もまた、私の部屋にたびたび遊びに来ていた。数年前までは。これもまた、ここ2、3年は1年に1回あるか無いかとなっている。
 彼の家の前には大きなソテツの木があり、その根元には私の知らない草本性の植物が根締めとして植えられてある。最近になって、それがシランという名の植物であることを知った。シランは紫蘭と書くが、「知らん」という言葉も連想してしまう。最近付き合いの薄くなったSに「お前のことなんか知らん」と言われているような気になる。
 Sは正直者で寂しがり屋である。付き合いの頻度が減ったのは、じつは、数年前に彼に恋人ができたからであった。寂しがり屋の彼は、恋人がいない時には暇つぶしに私を必要としたのだが、恋人ができてからは、私と時間を過ごすなんて時間の無駄となってしまったのである。正直者なのである。そんな彼を私は嫌いではない。

 友人のYは気は優しくて力持ちの男である。人に文句を言ったり、悪口を言ったりすることもあまり無く、高校生の頃からギターが上手く、歌も上手で、たくさんの人に好かれ、友達も多い男である。そんな彼がたまに、ひどく嫌われることがある。
 Sの家の庭にあったシランという植物はまた、Sだけでなく、Yのことも思い出させる植物となっている。シランは沖縄にも自生しており、ウチナーグチ(沖縄口)の名前もある。その名前がYを思い出させる。Yはまれにだが、飲みすぎると酒乱になる。

 シラン(紫蘭):花壇
 ラン科の多年草 原産分布は関東以南、沖縄 方言名:シュラン
 シランという名前は花の色が紫で、葉や全体の形がランに似ているから。方言名のシュランは、単にシランを沖縄発音したものであろうと思われる。
 長さ30〜50センチほどの花茎を伸ばし、その先に紫色のきれいな花を総状につけ、横向きに咲かす。広辞苑によると開花期は5月頃とある。『沖縄植物野外活用図鑑』にも「初夏の頃」とあるが、職場のシランは3月から4月の開花となっている。葉もきれいなので、花が無い時期でも庭の材料として景色となる。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.7.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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