ヒゴロモソウ
 私のベッドは自作である。枠を組んで底に金網を張り、木炭を敷き詰めてその上にスノコを置いている。ここまでが自作。木炭は湿気対策。
 スノコの上に敷布団を敷いているが、枕元の、スノコと蒲団の間にはハンカチで包んだラベンダーのポプリがある。これは、その匂いで気持ち良く寝られるかと思って。
 このラベンダー、しかしもう匂いは弱い。買ってから10年近く経っている。10月に北海道へ旅した時、それを思い出して、「そうだラベンダーだ。北海道はラベンダーの産地だ。ぜひ買わなきゃ」と思った。ところが、そう思ったのが列車の中、酒を飲みながらだったので、列車から降りたときにはすっかり忘れてしまっていた。
 北海道大学植物園を散策しているときに、「あれ、ラベンダーかな?」と思われる植物を見つけた。花をいっぱいつけていた。ラベンダーにしてはちょっと色が濃いような気がした。名札を見るとブルーサルビアと書かれてあった。どうも、青い花の咲くサルビアのようであった。後日、ラベンダーの開花期を調べたら7月〜8月中旬とあった。ラベンダーの花に会えるはずは無かったというわけである。
 ラベンダーの花には会えなかったが、でも、そこでラベンダーのポプリを買うということを思い出した。その後、土産物屋へ行く。静岡の友人、才色兼備のKさんへのお土産を選び、土産物屋のおばさんとおしゃべりしているうちに、またもやラベンダーを忘れた。ラベンダーはその後、家に帰るまでずっと忘れ去られてしまった。
 ラベンダーの実物を私は見たことが無いが、ラベンダーもシソ科で、サルビアと多少似ているらしい。サルビアの実物なら、私はこれまでに何度も見ている。サルビアは沖縄の気候に適しているようで、小学校や公園の花壇などでよく見かける。よく見かけ、知っている植物のサルビアだが、その和名は知らなかった。ヒゴロモソウと言う。

 ヒゴロモソウ(緋衣草):花壇
 シソ科の一年草 原産地はブラジル 方言名:なし
 サルビアがサルビアであることを、私は文献の力に頼らなくとも判るのであるが、その和名がヒゴロモソウであることは知らなかった。
 サルビアを調べると、『沖縄植物野外活用図鑑』に「ヒゴロモソウ」という名前で載っていた。緋衣草ということであろうと想像し、広辞苑を見ると、その通り緋衣草(ヒゴロモソウ)とあった。濃紅の唇形の花を緋色の衣と見立てたのであろう。
 サルビアは、実は、「広くはシソ科アキギリ属(学名サルビア)植物」(広辞苑)のことで、ハーブのセージ(sage)などもこれに含まれる。英語ではセージがCommon Sage(普通のセージ)で、サルビアはscarlet sage(緋色のセージ)とのこと。
 「原産地では小低木状になり、高さ1m内外」とあるが、よく見かけるのは高さ30〜50センチ内外のもの。「寒さに弱いために日本では1、2年草」ともあり、1、2年では小低木状にも、高さ1m内外にもならないということであろう。
 サルビアというと赤い花と連想するが、濃紅、黒紫色、紫、白など品種が多い。開花期は夏から秋。長い花茎を頂上に出して、唇形をした花を多く開く。

 白花


 ブルーサルビア(blue salvia):花壇
 シソ科の一年草 原産は北アメリカ 方言名:なし
 『沖縄植物野外活用図鑑』に「ブルーサルビア」と独立して紹介されているが、普通のサルビア(ヒゴロモソウ)と同属の別種。
 高さ40〜80センチ、原産地では宿根性の多年草とのことだが、温帯の日本では一年草扱いになるらしい。亜熱帯の沖縄ではどうなるのか不明。サルビアと同じく長い花茎を伸ばし、穂状にたくさんの花をつける。紫色の花、開花期は夏から秋。

 ついでに、植物としての写真は無いけれどセージとラベンダー。

 セージ(sage):薬用・香料・観賞用
 シソ科の一年草 原産は南ヨーロッパ 方言名:なし
 セージはサルビアの英語名。サルビアはシソ科アキギリ属の学名。
 花は紫色。開花期は夏。葉は薬用となり。肉料理に使われるハーブ(香料)としても有名。ソーセージのセージはこれのことかと思うが、正確には不明。
 

 ラベンダー(lavender):薬用・香料・観賞用
 シソ科の多年草 原産は地中海沿岸原産 方言名:なし
 高さ60センチ。花茎を頂上に出して、小さな花を穂状につける。青紫色の花、開花期は7〜8月中旬。花からラベンダー油が採れる。これが匂いの元。香料、薬用になる。
 
 記:島乃ガジ丸 2006.12.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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