オリヅルラン
 妄想癖のある私は、科学では証明できないような不思議なことは大好きで、UFOも宇宙人も、幽霊も雪男も、ネッシーもカッパも、いてくれると楽しいななどと思っている。
 妄想癖のある私は、その反面、科学も大好きで、数学や物理のように理詰めでものを考えるのが特に好きで、だから、UFOも宇宙人も、幽霊も雪男も、ネッシーもカッパも理屈に合わないようであれば、その存在を信用しない。好きだけど、信じていない。
 お守りとか、迷信の類も信じていない。生まれてこのかた、貰い物はあるが、お守りの類を一度も買ったことが無い。他人から譲り受けて、バックミラーにお守りがぶら下がっている車をぶつけたことはあるが、自分で買って、お守りを一切つけてない車をぶつけたことは一度も無い。西枕とか北枕とかも気にしていない。11年間、西枕で寝ている。
 そんな私だが、気持ちを込めたモノにたいしては、その気持ちがモノの中に存在しているであろうってことは信じている。

 私たち沖縄人は小さい頃から沖縄戦の悲惨さを教わってきた。学校の先生だけでなく親や親戚や、あるいは地元のテレビ局で放送される番組などを通してだ。だから私は、沖縄戦がいかに悲惨であったかということがまるで実際に体験したかのように心に刷り込まれている。しかし、三年前の夏のある日、「俺は沖縄戦の悲惨は知っているけれど広島や長崎の悲惨を知らない」ことに気付いた。「原爆ドームを観に行こう」と思いつき、その年の秋、広島へ行き、そして、長崎のことも知っておこうと翌年の秋、長崎へ行った。
 資料館、祈念館、モニュメントの前などには千羽鶴が飾られてある。修学旅行の生徒達が先生に言われ「面倒臭ぇなー」と思いつつ折ったものであろうと思われた。が、それは呑気なオヤジの浅はかな考えだった。資料館に入ると中で数人の女子中学生が鶴を折っていた。彼女たちの顔は、祈る顔であった。資料館を巡って、深く心を痛めたのだろう。真剣な顔をして鶴を折っている。一人一羽ではなく、できた鶴を箱に入れると、また、次を折る。その折鶴には確かに心がこもっている、とはっきり感じたオジサンであった。
 そんな少女たちの優しい心に、我が心も温かくなったオジサンではあったが、自分では一羽の鶴を折ることも無く、その場を去り、我が胃袋をも暖かくしてやろうと思い、飲み屋に向かった。まったく、いい加減で、呑気なオヤジなのであった。

 観葉植物として人気のあるオリヅルランは、その折鶴に名前は由来している。漢字で折鶴蘭と書く。名前はそうなっているんだが、オリヅルランは平和や優しさの象徴とはなっていない。もし、そうしておけば、沖縄の平和祈念公園などにたくさん植えられて、もっとメジャーな植物になったであろうに、オリヅルランには残念なことなのであった。

 オリヅルラン(折鶴蘭):鉢物・地被
 ユリ科の多年草 原産分布は南アフリカ 方言名:無し
 葉の間から茎を長く伸ばし、その先、または途中から下に気根を出し、上に葉を出して新しい株となる。このように根、葉を発生する茎のことを園芸用語でランナーと言うが、ランナーは1つの株からいくつも出て、気根が地面に着くと、そこに根を張り株が増えていく。白い小さな花がそのランナーの所々に咲くが、斑入りの葉がきれいで、垂れ下がるように伸びたランナーの姿もかわいくて、花はあまり観賞の対象とはなっていない。
 広辞苑によると、「伸びた茎の先の新株が折鶴に似る」とあって、そこから折鶴欄という名前になったと示唆されている。葉は鶴の羽だが、何本も伸びた根は鶴の足?まあ、折鶴に似ているかどうかはともかく、前述のようにランナーの先で宙に浮いた小株は見た目かわいい。小株を切り取り、別に植えることで、簡単に増やすことができる。

 花

 斑無し

 斑無しの花
 記:島乃ガジ丸 2005.2.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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