オキナワウラボシ
 倭国の風習ではどうなのか知らないが、沖縄ではハチナンカ(初七日)から四十九日まで、ナンカ(週忌)の午前中に毎週、男だけで墓参りをする風習がある。というわけで、このところ毎週、私も我が家の墓を訪れている。
 墓地の入口から我が家の墓まで50mほど歩く。幅1〜2mほどの細い道。両側に他家の墓が並んでいる。その道の中間辺りにある他家の墓の壁にオキナワウラボシが付着している。私とは2ヶ月前からの顔見知りだ。2ヶ月前からほとんど変わっていない。仲間を増やしたりせず慎ましい姿、「おう、相変わらず謙虚だな」と挨拶する。
 倭国の風習ではどうなのか知らないが、沖縄では年に2度、墓を掃除する機会がある。1度目はシーミー(清明祭)の時、シーミーは各家の墓で行うが、その日、または前日までに墓を掃除しておく。2度目は七夕の時、旧暦の七夕である。旧暦の七月七日は旧盆の約一週間前で、その日に墓の掃除をする。盆にはご先祖様が家にやってくる。ご先祖様は家に来る前に先ず墓を訪れる。で、墓をきれいにしておく、というわけらしい。

 シーミーの頃には気付かなかったが、七夕の掃除の時にオキナワウラボシに気付く。シーミーの後、七夕の少し前にこのHPでいくつかのシダ植物を紹介していて、その時、図鑑を見ていて、その特徴ある姿が記憶に残っていた。

 オキナワウラボシ(沖縄裏星):下草
 ウラボシ科の多年生シダ 琉球列島、小笠原諸島、熱帯亜熱帯に分布 方言名:不詳
 実物の写真を撮って、図鑑と見比べて、「これだ!」と思って、名前を見て、「なるほど」と納得した植物の一つ。他のシダ植物に比べて大きめの胞子嚢が、くっきりと葉の裏に目立っている。胞子嚢は円形、それを星とみなして裏星ということ。
 葉は革質で光沢がある。長さは20から40センチ。胞子嚢は黄褐色をしていて、裂片の主脈と縁の中間に一列に並んでいる。
 海岸から山裾の岩上に自生しているのが見られる。実家の墓は海岸近くの丘にあり、その墓地の他家の墓の壁に本種が2株ほど付着していた。2株とも3、4つの葉をつけているだけで、慎ましい感じを受ける。他の場所でも群生しているのはあまり見ない。その慎ましさは、庭の石組みの根締めに使い良いと思われる。

 葉裏
 記:島乃ガジ丸 2007.11.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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