ホトトギス
 戦後間もなく生まれた従姉は、いわゆる団塊の世代。周りにはたくさんの同年代生まれがいる。人生は競争であった。おかげで、彼女は向上心の強い女となった。
 向上心の強い彼女は、同じく向上心の強い、彼女より数年歳上の亭主と共によりよい生活を目指して努力してきた。その結果、数年前には別荘を持つ身分となった。それらを得る稼ぎは亭主の力であるが、それだけの稼ぎができるよう支えたのは彼女である。頑張って生きてきて、今は悠々自適の暮らしをしている初老の二人なのであった。
 その二人の別荘を、私はたびたび訪ねている。周りに同年代生まれがいっぱいの彼女はまた、周りと同じであるということもあまり好まない。別荘はヘンテコな形をしている。建築中、そのわけのわからない形から、しばらく近所の話題の種になったほど。
 そんな別荘の庭もまたヘンテコリンである。洋風なのか和風なのか判らない形である上に、洋風も和風も関係なくいろいろな草木を植えている。独特であることを好む初老の二人は、どこにでもある草木よりも、沖縄には珍しい種類を好む。私の知らない植物がそこにはいくつもある。「何それ?」と訊くと、いつも自慢げに答えてくれる。
 ホトトギスについては、私も以前から知っているのではあったが、それでも沖縄では珍しい部類に入る。沖縄の他所の庭では見たことが無く、私も実物は初見だった。

 ホトトギス(杜鵑草):生花・下草
 ユリ科の多年草 日本原産 方言名:なし
 ホトトギスの名は「花の模様が鳥のホトトギスの腹の斑紋に似るため」と広辞苑にあった。鳥のホトトギスのお腹を私は見たことが無い。
 沖縄には自生が無かったようで、『沖縄植物野外活用図鑑』には帰化植物に分類されている。そういえば、近所の庭や公園などではあまり見かけない。写真のものは珍しいモノ好きの、従姉の庭に植えられているもの。
 地下茎が伸びて繁殖する。文献の写真を見ると、花色は淡い紅紫から薄紫色などがあるようだ。その花弁には斑点がある。その模様がホトトギスのお腹。開花期は秋から冬。

 花
 記:島乃ガジ丸 2005.11.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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