ヒメツルソバ
 従姉の別荘には、沖縄ではなかなか見かけない植物がいくつも庭に植えられている。今年の春だったか、シロツメクサに似た、シロツメクサよりもずっときれいな花が、庭の地面の一部を覆っているのを見た。従姉にその名前を訊いたのだが、「えーとっ、何だったっけ、ちょっと待ってね、今思い出すからね。」と、しばし考える。「うーん、何だったっけ、・・・喉まで出掛かっているんだけど。」と言って、結局思い出せず、結果、私はその名前を知ることができなかった。
 ずいぶん経って、『沖縄植物野外活用図鑑』を見ていたら、シロツメクサに似た、シロツメクサよりもずっときれいな花があった。「あっ、あの花はこれだ」と気付く。
 その植物の名前はすぐに覚えることができた。ヒメツルソバという。私はこれを鶴姫蕎麦と覚えた。鶴姫はすごく覚えやすい。なぜなら・・・、
 高校生の頃だったか、浪人の頃だったか、漫画で「鶴姫じゃー」というのが流行っていた。少女マンガにしては瞳に星が描かれない、背景に花が描かれない私好みの漫画だったので、よく読んだし、よく覚えている。その作者は確か、えーとっ、誰だったっけ、・・・喉まで出掛かっているんだけど。

 ヒメツルソバ(姫蔓蕎麦):地被
 タデ科の多年草 ヒマラヤ原産 方言名:なし
 既に紹介済みのツルソバ(蔓蕎麦)も同じタデ科である。ヒメ(姫)は小さなもの、かわいらしいものという意味となる。よって、ツルソバに似て、ツルソバより小さくてかわいらしいという意味でヒメツルソバなのであろう。が、私には両者が似ているようには見えない。葉は確かに本種の方が小さいが、似てはいない。花は逆に大きい。この場合のヒメはおそらく、お姫様のようにきれいということに違いない。確かに、一面を覆うようにして咲く花はきれい。一方のツルソバは、姫を守る侍にでも喩えられよう。
 茎が地上を這って広がり、地面を覆う。グランドカバーに適しており、法面緑化にも使えると思うが、本土では強害草にもなっているらしいので、迂闊には使えない。
 春から夏にかけて、シロツメクサに似た丸い淡紅色の花を咲かす。葉の表に山形をした暗褐色の班がある。これもシロツメクサに似ているが、シロツメクサはマメ科。
 記:島乃ガジ丸 2005.12.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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