ゲットウ
 沖縄では、旧暦12月8日に鬼餅の行事がある。今年は今週の月曜日(17日)にその日が当たった。鬼餅の行事をウチナーンチュはムーチーと呼んでいる。その日にカーサムーチーを仏前に供え、厄払いとする。ムーチーは餅、カーサは葉のこと。カーサムーチーは葉っぱで包んだ餅のことを指す。包む葉にはゲットウの葉を用いる。
 アパートの庭にも、職場の庭にも、ちょくちょく顔を出す従姉の家の庭にも、その辺の空地にも、山の中にも、土さえあればほとんど何処にでもナンクルミー(自然発生、たぶん鳥によって種が運ばれる)するゲットウは、その実や花の匂いとムーチーガーサとして用いられるということで、もっともウチナーンチュに親しまれている植物の一つ。
 ゲットウの葉は料理の器としても使える。刺身を乗せたり、和え物を乗せたりする。濃い緑が料理をきれいに見せるだけでなく、葉に殺菌効果のある物質が含まれているので、衛生上の効果もある。シュウマイを蒸すとき下敷きとして私は使う。シューマイをゲットウの葉ごと皿に移す。蒸気に蒸された葉の良い匂いが部屋に漂う。

 ゲットウは、漢字で書くと「月桃」。日本画家の雅号(文人・画家などが本名以外につける風雅な別名)に合いそうないい名前だ。ウチナーンチュには、でも、ゲットウとう名よりサンニンという名がより親しい。前述したようによくナンクルミーする植物の一つなので、たいていの原っぱにはある。「その辺からサンニンの葉っぱを4、5枚取っておいで」と親に言われて、「三人?8×8?4、5枚?」なんて悩むような子供は、今はどうか知らぬが、私が子供の頃は、よほど沖縄口が嫌いな家庭で無い限り、いなかった。

 ゲットウ(月桃):添景・鉢物
 ショウガ科の多年草 分布は九州南部から琉球列島、台湾等 方言名:サンニン
 別名シェルジンジャと言うが、これは英語名のShell gingerからきている。シェル(貝)に似た形の花をつける。花は白色、唇弁は縁が黄色で中心が紅色。房状に下垂する。芳香のある花で、開花期は4月から6月。放っておけば高さは2mを超える。
 芽が出て2、3年はかわいいが、芽はどんどん増え、株が太る。大きくなった株はあまりかわいくない。よって、庭の材料としては使い辛い。日陰に耐えるので、鉢植えにして観葉植物として使える。鉢植えだとそう急には太ることも無い。庭の材料として使う場合は他の樹木の茂った陽の当たらない場所で、景色が寂しい所などに用いる。
 葉の表面は濃い緑色で光沢がある。長さ50cm前後あり、良い匂いがする。旧暦12月8日に「ムーチー」とよばれる行事で、この葉を用いる。

 花1

 花2

 実

 斑入り種の葉
 記:島乃ガジ丸 2005.1.19  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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