アリッサム
 冬だというのに暖かい日が続いている。近くの原っぱが宅地造成で無くなって、住処を奪われたのか去年は来なかった鶯が、今年は戻ってきた。彼らもそれなりに環境適応するのであろう。一週間前に、鶯が囀りの練習をしているのを聞いた。そして、今朝の鶯、だいぶ上達していた。ホーホケキョまでもう一息といったところ。
 私の部屋、台所と風呂場の窓は、真冬であろうと常時、左右少しずつ開けている。居間と寝室の窓は、冬の間はほとんど閉じている。土日の昼間、晴れた日に数分間開けるくらいである。今これを書いているのは、朝、ホーホケキョまでもう一息の声を聞いた2月17日。暖かい。居間と寝室の窓を開け放つ。今季初の全開。心地良い風が吹き込む。

 五節句という行事がある。正月7日は人日(じんじつ)と言い、七種(ななくさ)の節句。3月3日は上巳(じょうし)と言い、桃の節句。5月5日は端午(たんご)と言い、端午の節句、またはあやめの節句。7月7日は七夕。9月9日は重陽(ちょうよう)と言い、菊の節句。とのこと。
 このうち、七種の節句には七種粥(ななくさがゆ)を食べる風習がある。倭国ではセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、スズナ、スズシロがこの時期(もちろん旧暦の1月7日である。新暦だと2月の終わり頃に当たる)収穫できるのだろう。しかし、沖縄の2月の終わり頃は、もう暖かい。沖縄の七種粥はダイコンの葉(これはスズシロのことで一緒)、シマナー、ンスナバーなど季節の野菜を7種入れるとのこと。季節の野菜と言ってもこの時期、収穫できる野菜は多いので、適当な7種ということであろう。
 アリッサムを調べると、その和名がニワナズナであるということが分った。春の七種の一つ、ナズナの仲間であるかと思った。で、上記の文となったが、属が違った。

 アリッサム(Alyssum):花壇
 アブラナ科の一年草、または多年草 地中海沿岸原産 方言名:なし
 アリッサム(Alyssum)は学名の属名。本種の学名はLobularia maritimaであるが、以前はAlyssum属に分類されていたらしい。別名ニワナズナ(庭薺)とあったが、これが和名ということであろう。ナズナは同じアブラナ科のナズナ(bursa-pastoris)属、見た目が似ていて、庭の花にするところからニワ(庭)がついたものと想像される。園芸店などではスイートアリッサムという名前をよく見る。なお、アリッサムは、アブラナ科ニワナズナ属植物全般も指すとのこと。すると、アリッサム属の植物はいったいどうなる。
 アリッサム(Alyssum)属の植物に関する説明が広辞苑にあった。「アブラナ科の観賞植物。数種をロック‐ガーデンや花壇に植え、丈低く、黄色の小花を多くつける。宿根アリッサムと称。」とのこと。ニワナズナと同じく地中海沿岸に分布するらしい。正確にはこれをアリッサムと言い、ニワナズナ属の種はロブラリア(属名)と言うようだ。
 草丈は15~20センチ。アブラナ科の特徴である四弁の花を茎の先にかたまって多くつける。花色は白、紫、赤など。開花期は春から夏。

 花
 記:島乃ガジ丸 2007.2.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
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