ヤドリガジュマル
 先週土曜日、久々の青空となり、暖かそうな陽が差していた。外は暖かそうだが気温は低いみたいで、部屋の中は寒かった。隙間風ビュービューのせいである。焼け石に水のような小さな温風ヒーターで、足先だけを暖めながらHP作成ソフト攻略に精を出した。
 新ソフト攻略は2週間前から(と言っても毎日やっているわけでは無い。日にして3、4日、時間にして10時間くらい)同じ作業を繰り返している。上手く行かないのだ。その作業が大きな壁となって、その先に進めないでいる。マニュアル本のどこを読んでも解決法が見つからない。で、この日も試行錯誤する。2時間やっても光一筋さえ見えない。壁は厚い。2時間もやっていると腹が立ってくるので、その辺りで諦める。

 外は陽光だ。午後、気晴らしに散歩に出た。図書館へ行って借りていた本を返し、そのまま首里の町をブラブラする。沖縄を訪れる年間500万余の観光客、その誰一人としてまず通ることは無いだろうディープな道を歩く。昔ながらのマチヤグヮー(雑貨店のようなもの)がある。朽ちかけた瓦屋根の家がある。昔を思い出す懐かしの風景、気分良し。
 部屋の中が寒かったので、前日と同じ(沖縄の)冬姿、ブルゾンを着て散歩に出てしまっていた私は、途中から汗をかいていた。どこかで休もうと思い、近くに伯母の家があることを思い出した。この道、伯母の家へ向かう裏道であった。細い道なので利用することはほとんど無いのだが、懐かしい感じがしたのは、景色に見覚えがあったからだ。
 伯母の家に着く。1年半ぶりくらいの訪問だが、家には誰もいない。庭に入って、ちょっと休む。しばらく見ないうちに庭の木々のいくつかが変っていた。

 10年ほども前のことだったか、正月だったかお盆だったかも忘れているが、伯母の家に訪れたとき、
 「ガジー(と、実際に呼んだ訳では無い。本名は伏せておきたいので、ガジーとしておく)、不思議な事があるよー。庭のガジュマル(ヤドリガジュマル)が大きくなるのに合わせて、それにくっついている石も大きくなっているさー。」と言う。
     
 伯母の庭にあるヤドリガジュマルは石付きの、当初は高さ50cmほども無く、小ぢんまりと仕立てられていた。おそらく石付き盆栽として作られたものであった。石と樹木の大きさもちょうど良いバランス、岩に樹木がしがみついている感じだったのが、その時にはもう形が崩れ、樹木に石がしがみついているように見えていた。伯母の言うように石が大きくなっているわけは無い。「そんなわけないでしょう」と私は言う。伯母が反論する。暫くあーだこーだと会話した。甥と会話することそのものが伯母の目的なのであった。

 そのヤドリガジュマル、1年半前はよく見なかったので、どうだったか覚えていない。が、今回はじっくりと観た。ヤドリガジュマルは健やかに生育していた。健やかに生育したお陰でしかし、姿は無残。高さ1mを超え、下枝を全て失い、葉張り1mほどの笠形に整形されたヤドリガジュマルは、ただの刈込み低木となり、その根元にちょこんとくっついている石は、もはや盆栽の景色としての意味を全く無くしていた。

 ヤドリガジュマル(宿り榕樹):生垣・刈込・添景・盆栽
 クワ科の常緑低木。分布は日本、台湾。方言名:無し
 『新緑化樹木のしおり』にはヤドリガジュマル、別名マルバガジュマルとあり、『沖縄の都市緑化植物図鑑』にはマルバガジュマル(丸葉榕樹)とある。どちらが正しい和名なのか判断に迷うが、沖縄のことなので、どちらでも良いということにしておこう。
 枝は匍匐する。分枝が多く自然に盆栽形になると文献にはあるが、割と暴れる。年に1回程度は剪定して形を整えると良い。そうすれば確かに盆栽形に作ることができる。自然に放っておいても高さは1〜2m程度しかならないので、庭木としては扱いやすい。
 記:島乃ガジ丸 2005.1.24  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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