チャノキ
 若い頃(20代半ば)、配達の仕事をしていた。配達先は那覇市から南部一帯、遠くは中部の石川市(現うるま市)、嘉手納町、読谷村まであった。
 石川市の配達先に行く途中、茶畑があった。テレビや雑誌などで見たことのある静岡県のどこぞの茶畑風景を彷彿とさせる景色だった。配達の仕事は2年ほどで辞め、その後茶畑を観る機会は無かったのだが、それから30年近くが経って、職場が時短となって自由な時間がたっぷりとなって、親戚の土地を30坪ばかり借りて農業の真似事みたいなことをやっている頃、沖縄島北部大宜味村で農業をやっているTさんに再会した。
 Tさんは姉の友人のご亭主で、若い頃何度か会って一緒に飲みにも行っている。子供が中学高校の頃だから働き盛りの中年の頃か、ある日突然、天の声が聞こえ、「農業がやりたい」となって、女房子供を那覇に残して、単身大宜見へ移り住んだ人。

 「農業は面白い、楽しい、1度畑を見においで」と言うTさんの誘いを受け、ある日、大宜味村のTさんの住まいと、Tさんが師事しているIさんの家、及び畑を見学しに行った。2012年1月の事。Iさん家の辺りは建築物がほとんど無い、ほぼ山と野原と畑地ばかりのところ。ボーっと立って呼吸をしているだけで気持ちの良いところ。
 その後何度も、Tさんに招かれIさんの家にお邪魔する。その年だけで10度は行っているはず。イノシシ鍋パーティーなどやって、イノシシは美味しいということなどを知った。そして、その年の3月、3度目訪問くらいの時に、私は一人でIさん家近辺を散策した。その時、Iさん家の手前に久しく目にしなかった茶畑と遭遇した。
 
 チャノキ(茶の木):薬用・嗜好飲料用
 ツバキ科の常緑低木 インド、東南アジア、中国南部の山地が原産 方言名:チャー
 茶は漢名でその読み方がそのまま和語となったものと『植物名の由来』にあった。同じような由来の植物には蜜柑(みかん)、桔梗(ききょう)、竜胆(りんどう)等があるとのこと。茶は樹木も指し、飲料となった茶も指す。樹木の場合はチャノキとも言う。
 インド、スリランカ、中国、日本、インドネシアなどで栽培されている。日本での産地は静岡県が有名、沖縄でも栽培され、本島北部(ヤンバル)で多く栽培されている。
 中国では紀元前1世紀には既に煎じ薬として利用されていて、その後、嗜好飲料としても利用され、中国全土にチャノキの栽培が広まったとのこと。日本では1200年頃に中国から入ってきて、広まった。沖縄には1627年に伝来し、現宜野座村で栽培が始まったとのこと。その後、北部一帯に栽培が広まった。
 チャノキの品種は中国種とアッサム種に大別され、その間に両種の雑種があり、日本は中国種が多く、在来種もあったが自然交雑していき、その後、優良品種が作られた。沖縄にも在来種があったが、1966年頃から優良品種が導入されていき、栽培されている。現在も大宜味村、旧石川市などへ行けば茶畑を見ることができる。
 高さは、放っておけば7〜8mになるが、栽培ものは1m前後に仕立てられる。葉は長楕円形で先が尖り、硬く表面に光沢がある。花は芳香があり色は白の五弁、開花期は10〜11月頃。「果実は鈍い3稜を持ち、裂開して種子を飛ばす」とのこと
 記:島乃ガジ丸 2019.7.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
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 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
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 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
 『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行
 『琉球薬草誌』下地清吉著、琉球書房発行
 『沖縄やんばるフィールド図鑑』 湊和雄著 実業之日本社発行
 『グリーン・ライブラリー』タイムライフブックス発行
 『ネイチャーガイド 琉球の樹木』大川智史・林将之著、株式会社文一総合出版発行
 『つる植物』沖縄都市環境研究会著 (有)沖縄出版発行
 『熱帯アジアの花』ウィリアム・ウォーレン著、チャールズ・イー・タトル出版発行
 『講談社園芸大百科事典』野間省一編集、講談社発行
 『沖縄の薬草百科』多和田真淳・大田文子著、那覇出版社発行
 『沖縄食材図鑑』田崎聡著、有限会社楽園計画発行
 『自分で採れる薬になる植物図鑑』増田和夫監修、柏書房株式会社発行
 『家庭で使える薬用植物大図鑑』田中孝治著、社団法人家の光協会発行
 
 
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